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【元女川中学校教員・佐藤敏郎先生より】益城七夕会議

2016.8.05

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短冊に願いを書いたのは小学校のときが最後だった気がする。大人になってからも「今ならなんて書くだろうな」と思いながら、街角や教室の七夕飾りを眺めていた。
今年の七夕の日、私は熊本にいた。

2016年7月7日夕方、益城中央小学校の一室に教育長、教育課長、益城、木山両中学校の校長、そして、カタリバのスタッフが集まった。益城七夕会議だ。

熊本の震災は新学期だった。 5年前は長い春休みがあって、その間にいろんな準備をして学校がスタートしたが、今回は短期間で教育課程を見直し、年間計画を作り直す作業をしなければならなかった。教員の負担、ストレスは相当のはずだ。
それなのに、先生方は皆、笑顔で明るい。熊本はそういう土地柄なのかな。でも、考えてみれば5年前、私たちもそうだったかもしれない。私などはオヤジギャグばかり言っていた。

緊急事態はまだ続く。しかし、手探りの日々の中で見えてきたこともある。これからはスクランブル的ではなく、何らかの見通しをもって進む「次の段階」だ。特に、中体連大会が終了したこの時期は、地震のない年であっても、中学校にとっては大切な節目である。

カタリバは木山中学校の生徒、保護者対象のアンケートを実施した。3ヶ月を経て、生徒たちに何らかの傾向が現れてきたのであれば、それを元に支援の形を作りたいと考えたのだ。

数値を見ると、ある程度予想されたことだが、学習を気にしている生徒は多い。授業の進度もだし、自宅に戻れず、学習環境の不自由さも心配だ。特に3年生は受験のことを考えると、やはり不安なのだ。
そして、不安はあるけど、周りに心配をかけたくない気持ちも、今の境遇をバネにしようという気持ちもうかがえる。

アンケート結果を見ながら、苦労話、うまくいったこと、思うようにいかないこと…、話題は尽きなかった。こういう場は、あるようで実はあまりない。
長年、益城の学校に関わってきて、この3ヶ月間も学校を支えるために奔走している方々だ。言葉一つひとつに生徒への愛情、益城への愛着があふれている。子ども、そして先生方を心から心配している。
私は、日中目にした多目的スペースを仕切って授業を受けている姿や、小中学生が入り混じって行き来している廊下や、使用されていないひっそりとした中学校の校舎を思い浮かべながら、聞いていた。
今日まで学校が持ちこたえている陰に、こうした方々がいることを忘れてはいけない。

コラボスクールの名前を考えることになった。願いをこめた名前にしよう。七夕の短冊みたいに
女川は向学館、大槌は臨学舎、益城は…。

坂本課長が言った。「前例のない日々が続き、課題だらけの状況、明日からどうやっていくか。大事なのは『創り出す』ということだ。」

体験したことのない日々は逆に言えば発見の連続である。初めての課題が多いということは新しい可能性がたくさんあるということだ。
カタリバとのコラボスクールもその一つ。夏休みの合宿やキャリア教育との関わりなど、新たな展開もありそうだ。卒業生がボランティアに来たいという声もあるという。

話すほどに見えてきた方向性、それは「創る」ということ。何を創る?それは「夢」だ。
5年前、津波で何もかも流された女川町で「夢だけは壊せなかった大震災」という句を詠んだ生徒がいた。災害があったせいで、できないこと、あきらめることがあってはいけない。両校の教育目標にも「夢」が謳われている。

ましき夢創塾

空港から学校に向かう途中で見たブルーシートだらけの町の様子を思い浮かべる。ここから創り出すのは彩り鮮やかな「夢」だ。

目標や願いは言葉にするといい。七夕はそんな日だ。