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【被災地の教育現場 vol.9】 2つの校歌

2015.7.22

23年度は出島(いずしま)の女川第二中学校の生徒たちが、第一中学校の校舎で学校生活を送っていた。4月から一緒だった女川第一小学校は、7月に、それまで第二小学校に入っていた役場が仮設庁舎に移ったので、そちらに移動した。

同じ校舎に二つの中学校の形はその後も続くことになった(平成25年度から統合され「女川中学校」が開校)。職員室は別だったが、職員同士は積極的にコミュニケーションを図った。お互いの授業もよく行き来して、参考にした。

女川町は震災前から「学びの共同体作り」をかけ声に、学校間、校種間の交流が盛んだった。同じ校舎なので、それが一層推進できた格好である。そういう経緯もあって、合同でやることと、各校でやることを上手に調整できたように思う。入学式や卒業式はもちろん別々、授業も評価の関係もあり、原則として別だったが、体育や総合学習などの内容に応じて合同でやった。

運動会は合同開催。
一中、二中それぞれ伝統の名物種目を織り交ぜたバラエティに富んだプログラムになった。教員スタッフも増えて心強い。これは盛り上がりそうだと着々と準備が始まった。


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打合せ中、一度だけ雰囲気が硬くなった。ある問題に気づいたのだ。
閉会式の「校歌斉唱」である。一中では毎年肩を組んで大声で歌う恒例のプログラムだが、200名以上の一中生に対し、二中生は10名ちょっと。バランスが悪すぎる。当然、このプラグラムどうしようかとなった。私は「『若い力』でも歌いますか?」等とジョークを言ったが、どの先生の笑顔もぎこちなかった。

運動会当日、どの種目も大いに盛り上がり、迎えた閉会式。司会の生徒が「校歌斉唱」と言ったとき、会場が一瞬固まった気がした。

元気よく歌う一中校歌に続く、二中の校歌は一中の校歌に負けないくらいの大合唱になった。

なんのことはない、生徒から「両方覚えて歌おう」という意見が出て、一中生は二中の、二中生は一中の校歌を覚えたのだ。二つの校歌を高らかに歌う生徒たち。合同運動会でもっとも感動的なシーンだった。

「物は考えよう」とはよく言ったもんだ。

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≪つづく≫


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このブログ「被災地の教育現場」シリーズは、
元 女川中学校教員である佐藤敏郎先生が、教育現場を見てきた先生として、
コラボ・スクール女川向学館のメンバーとして、被災地の教育現場の現状を
つづる連載です。
学校現場の視点、保護者の視点、地域の視点でコラボスクールの価値と
可能性についてつぶやきます。

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