【被災地の教育現場 vol.15】 さんまdeサンバ
♪歌え踊れ今日は秋刀魚の祭り♪
女川では、今年も秋刀魚収獲祭が開催された。
今年の会場は震災前と同じ魚市場。町は、秋刀魚を焼く煙と、4万人以上の人で溢れた。
収獲祭のテーマソングは知る人ぞ知る「さんまdeサンバ」だ。
歌っているのは女川の町民バンド、オーナーセカンズ。水産会社の二代目が集まって結成したバンドで、「サンマの唄」「潮の詩」など女川を題材にしたオリジナル曲がある。
「サンマdeサンバ」が女川第一中学校(現女川中)の運動会のプログラムになったのは、平成17年、ちょうど私が赴任した年からだ。この曲に振り付けをしたKさんが学校に来て、全校生徒にレクチャーしてくれたのを覚えている。
れっきとした縦割りの得点種目。盛り上がって踊ったチームが勝ち。年々、家族や地域住民もみんな巻き込んでの運動会名物となり、それ以来、港祭りのパレード等、イベントの定番になった。もちろん、秋刀魚収獲祭のフィナーレは中学生を中心に大フィーバーだった。
この曲を作った方は、オーナーセカンズのメンバー佐藤充さん。充さんには、私も何かとお世話になり、会うと必ず明るく声をかけていただいた。
ご存じの方もいると思うが、充さんは、津波を前に動けないでいた中国人の研修生を高台に誘導し、20人全員を救った後、津波に飲まれてしまった。生徒に振り付けを教えてくれたKさんはご主人が犠牲になった。
23年の秋、秋刀魚収獲祭は、やや規模を縮小したものの、会場を高台の多目的運動場に移して開催された。
壊滅状態の町で祭りをするなんて…。中止にしても、文句は誰も言わなかったはずだ。でも、やった。こういうのを心意気と言うのかな。
プログラムが進み、いよいよフィナーレだ。
サンバのリズムに乗って、中学生が登場。そろいのTシャツとペットボトルのマラカスを手に元気に踊り出す。
町民、そして町外からのボランティアの皆さんが、飛び跳ねながら輪に加わった。充さんの歌声が会場に響き渡る。
「さんまdeサンバ」は、まるでこの日のために作ったみたいな曲だと思った。充さん、みんな踊ってますよ、見えますか。
悲しみを乗り越えるとか、前に進むとか、言葉では言えるけど、それはどういうことなのか分からない。
でも、さんまdeサンバを踊る、笑顔が弾ける、悪くない、うん、最高だぜ女川。あ、Kさんも踊っている。
♪来年もまたこの場所で会いたいね、合言葉はサンマdeサンバ!
▼さんま収穫祭フィナーレの”さんまdeサンバ”です▼
https://www.youtube.com/embed/a7PVmY7CJSw/
≪つづく≫
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このブログ「被災地の教育現場」シリーズは、
元 女川中学校教員である佐藤敏郎先生が、教育現場を見てきた先生として、
コラボ・スクール女川向学館のメンバーとして、被災地の教育現場の現状を
つづる連載です。
学校現場の視点、保護者の視点、地域の視点でコラボスクールの価値と
可能性についてつぶやきます。
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