【被災地の教育現場 vol.23】 みあげれば がれきの上に こいのぼり
みあげれば がれきの上に こいのぼり
震災の年の5月5日子どもの日、その生徒はガレキだらけの道を歩いていた。
ついついうつむいてしまっていることに気づき、下ばかり向いてないで顔を上げなくちゃと、ふと上を見た。そしたら、壊れた建物の上に、誰かが掲げた鯉のぼりが泳いでいたという句だ。
難しい言葉は一つもない。
でも、十七音の言葉の中に、津波の威力、悲しみ、無力感、やさしさ、希望、決意…。あらゆる情景や想いが詰まっている句だと思う。
この句は16カ国語に訳されて、ラジオの国際放送で全世界に放送された。そして、下の句を募集すると、世界中から800もの作品が寄せられた。それをうけて七・七に直してみようという授業をした。12月のことだ。
たとえば中国から
「涙をふいて笑ってください 美しい故郷をもう一度立て直しましょう 桜はまた咲くから」という下の句が届いた。それをある生徒は「涙の先に 新しい命」という七七(下の句)にした。
みあげれば がれきの上に こいのぼり 涙の先に 新しい命
スーダンから届いた「明日は現実になる 夢のこいのぼり」は「希望をもって 明日へと泳ぐ」という下の句になった。
みあげればがれきの上にこいのぼり 希望をもって明日へと泳ぐ
その他にも、たくさんの下の句ができた。会ったことのない海外の方との共同作業とも言える。
あきらめないと空を泳いだ(パキスタン)
風が吹いたら 必ず会える(中国)
空から見ている 頑張る姿(ベトナム)
祈りが届いた 遠い被災地(ミャンマー)
被災地の一人の生徒が、あのときふと見上げたときに生まれた言葉が、海を越えた。
5年経ったこの4月からは国語の教科書に載るという。時間も越えるということか。
彼女がうつむき続けていたらこの展開はない。
上を向くっていいなぁと思う。空は果てしなく続いていて、行き詰まらない。そして、昔の歌にもあるが、涙がこぼれない。
≪つづく≫
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