みらいを描く〜双葉みらいラボ5周年感謝祭~
■ 色んな人々に支えられて迎えた、双葉みらいラボ5周年
認定NPO法人カタリバは、福島県双葉郡広野町にある福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校の生徒を対象に、被災地の子どもたちを支援する「コラボ・スクール 双葉みらいラボ」を運営しています。
みらいラボでは1日40〜50名程度の生徒が来館し、スタッフに勉強を教えてもらったり、探究学習の相談に乗ってもらったり、彼ら彼女らの成長の場として放課後の時間を過ごしています。また、学校の先生やカタリバスタッフだけでなく、地域の方々や卒業生などの多くの方々も、イベントに参加したり、生徒の探究学習の相談にのったりするなどしており、生徒が多様な背景を持つ人々と出会う場所にもなっています。
双葉みらいラボの始まりは2017年。当時は東日本大震災を小学生のときに経験した生徒が多く学校に通う中で、学習の遅れがあった生徒や、保健室登校をしていた生徒も多く在籍していました。そんな生徒たちに居場所を作り心のケアをするという目的で、当時まだふたば未来学園高等学校が隣接する中学校の校舎を間借りしていたとき、校舎内の技術室を借りてプレオープンしたのが始まりでした。
そして、2017年9月28日、株式会社小松製作所から広野中学校の校舎の脇に専用のプレハブ校舎を寄贈いただき、みらいラボは正式にオープンしました。「双葉みらいラボ」という名前もその頃、みらいラボに来館する生徒たちから公募し、「この場所から未来を創っていく」という願いを込めてその名前が決まりました。
2019年4月には新校舎が完成し、現在の場所での活動がスタートしました。現在のみらいラボがある校舎内の地域協働スペースには、生徒や先生だけでなく、地域の方々も気軽に利用できる「カフェふぅ」もオープンし、より多くの方々と生徒が出会う場所となりました。みらいラボでも、放課後のイベントを充実させたり、生徒の探究学習のサポートにより力を入れるなどし、震災から8年を経る中で、その役割も生徒たちの心のケアから、生徒の意欲を育むことへと変化していきました。
2020年以降は現在に至るまで、コロナ禍での運営が続いています。そのような状況の中でも、オンラインを利用したイベントや学習支援を行うなどの工夫をしながらも、新たな生徒の学びを作る機会を、先生や地域のみなさんを始めとした様々な人たちと共に作っています。そんな中で、校内における研修やマイプロジェクトなどに取り組む生徒が多く見られ、外部のイベントやコンテストなどにも積極的に参加する生徒も出てきています。
そして、コロナ禍による活動の制限も緩和されつつある2022年は、地域の方々と協働したイベントも開催するなど、生徒だけでなく大人も学び、学び合う人同士が多く出会う場所になることを志向して、現在様々なプロジェクトが進行中です。
■5年間を振り返り、これからの未来を考える「双葉みらいラボ5周年感謝祭」を開催
そんな変遷を辿ってきたみらいラボですが、先日の2022年9月28日、5年前のその日、みらいラボがプレハブ校舎へ移り、正式にオープンした日を記念して、「双葉みらいラボ5周年感謝祭」を実施しました。
オープンに至るまではもちろん、オープンした後も多くの人に支えられ、みらいラボは5年という節目を迎えることができました。そんな中で、改めてこれまでお世話になった寄付者や地域の方々に感謝を伝え、みらいラボに関わり続けてくださっている方々とこれからの新しい5年を描きたいという想いを込めて、この5周年感謝祭では掲示やイベントなどを企画しました。
感謝祭の期間中、みらいラボの入り口のエリアには、寄付をいただいている企業様や個人寄付者の方からの双葉みらいラボへのメッセージを掲示させていただきました。どの応援メッセージにも異口同音に「未来は自分の手で拓ける」という力強い思いがこめられており、生徒たちも入り口で立ち止まって一つずつ文章を読んでいました。
5周年記念日の前日である9月27日(火)には、これからのみらいラボを、生徒やスタッフだけでなく、先生や地域の方々も含めた様々な人と創っていくという想いを体現する第一歩として、モノづくりイベント「オリジナルカードスタンドを作ってみよう」を実施しました。木材を地域の方に提供いただき、のこぎりなどの資材は先生にお借りして、生徒たちとともに木を加工してカードスタンドを作っていきました。当日は地域の方にも参加いただき、生徒、スタッフ、地域の人たちが様々な話をしながら木を削り、みらいラボのテーブルに置くカードスタンドが完成しました。「意外と木を切るのが難しい」と言いながらも、それぞれ思い思いの形のカードスタンド作りに取り組んでいました。
そして、記念日である9月28日(火)には、今回の5周年感謝祭のメインイベントである「みらいを描こう!~双葉みらいラボのあれから。これから、~」を実施しました。生徒・スタッフ・先生・地域の方々が集まり、自分自身の取り組んでいる活動やプロジェクト、好きなことを語り合うこのイベントは、総勢30名ほどが参加するイベントとなりました。生徒からは「自分の好きなことを面白いと言ってもらえた」という声や、地域の方からは「毎月でもこんな対話の場を作りたい」といった声が上がり、様々な立場の人がともに出会い、自由に語り合う場の大切さを再認識しました。
■たくさんの人々と創っていく、これからの双葉みらいラボ
双葉みらいラボでは毎年この時期に「みらいラボへの手紙」と題して、生徒が手紙を書いてくれます。その手紙には「自分にとってみらいラボとはどんな存在か」ということを多くの生徒が自分の言葉で綴ってくれます。
「辛いことがあった日も、ここに来れば、ちょっと気分が楽になります」
「自分を構築した3年間を、ここで過ごしたことはかけがえのない思い出です」
こんなメッセージを、今年も生徒が書いてくれました。双葉みらいラボは多くの生徒にとって、放課後のひとときを過ごす心の居場所であるとともに、自分の未来を創っていくかけがえのない場所であると、改めて多くの生徒が教えてくれました。
震災から11年が経ち、ふたば未来学園に通う生徒たちは震災当時は5歳前後。当時のことはまだ小さくてよく覚えていないという生徒が多く在籍するようになりました。そんな中でも、双葉みらいラボはその役割を変えていきながらも、今日も生徒たちの居場所となり、自分自身の未来を思い描く場であり続けています。ここに通う生徒たちが、自らの意欲と創造性を育むきっかけと出会い、思い思いの未来をつくることができるように、寄付者や地域のみなさんを始めとした多くの人々とともに、みらいラボは6年目に向けて走り始めました。