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【事例紹介】参加高校生に大きな変化!3.11を学びに変える「教育旅行」

2016.2.01

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「生徒のため、学校のために何ができるのか」。

この想いと真摯に向き合い、作りあげた新しい教育プログラムが2015年秋より始まっています。

東北のいまを自分の目で見て、話を聞いて、グループワークを通して日常に繋がる学びを生み出していく学習型ツアー「教育旅行」です。

このツアーの誕生には、カタリ場の授業を導入していただいている私立湘南学園高等学校の先生の一言が大きく関わっています。

カタリバの活動報告書を読んでくださっていた先生が、コラボ・スクールのページで手を止め、ふともらした「生徒たちに震災のことを忘れて欲しくない」。
その言葉を受け、冒頭の問いがカタチとなって、プロジェクトは動き出しました。

記念すべき第一回目となった教育旅行は10月26日〜28日、2泊3日の行程で実施されました。参加生徒は湘南学園高等学校の2年生。修学旅行先である九州、四国、関西、東北の中から東北を選択した48名です。生徒たちには東北とビデオ通話を繋いでの事前学習を行ってからツアーに参加してもらいました。

現地では津波で多くの子どもたちの命が失われた大川小学校を見学し、そこでどんなことがあったのか、命を救うために何ができたのかを考えるワークを行いました。

講師は元女川中学校教員であり、現女川向学館のスタッフである佐藤敏郞先生。佐藤先生は娘の一人を大川小学校で失っています。教員として、親として、そして遺族として。佐藤先生から紡ぎ出される言葉に、生徒たちは多くのことを感じ取っていました。

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夜は、石巻市内に通う同じ高校生と3.11についてディスカッションも行いました。辛い体験をしながらも、当時の話をしてくれた石巻高校1年生の男子生徒は「日本全国どこでも災害の来ない保証のある地域はどこにもない。被災地という言葉が使われるならそれ以外は未災地だと、自分が語ることで助かる命が増えるのならそっちに賭けたい」と話していました。

そんな彼の言葉を受け、湘南学園高校2年生の河村遼さんは「つらい思いをした人たちが色々教えてくれたので、これを持ち帰っていろいろな人に伝えなければいけない」と決意をしてくれました。

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講師を務めた佐藤先生は、湘南学園の生徒たちの様子を次のように語っています。
「これまでたくさんの高校生を案内してきたが、あんなに熱心に考えてくれたことはなかった。生徒にどんなことを考えてきてほしいか、綿密に考えていたことや事前学習を東北とビデオ通話でつないで行ったことなど、カタリバならではの工夫が、高校生を本気にさせたのだと思う。」

ツアーに参加した生徒たちの熱心さは、引率にあたられた山田美奈都先生にとっても、大きな驚きとなって受け止められました。
「佐藤先生の授業後の座談会では、これまでにないほど活発なディスカッションがなされていました。自分の意見を主張するのが苦手な生徒たちが、自分の意見を、自分の言葉で語れるようになったことが、一番変わったと思います。また、同年代の高校生の話を聴いたのも、強く印象に残っているようです。「自分たちより1つ年下なのに、なぜあれほどまでに語れるのか」と、かなり刺激を受けていたようです」。

東北での学びは、教育旅行後に素晴らしい連鎖を生み出しました。ツアーに参加した有志30名による「東北部」が発足。「自分たちが出来ることをしたい!」と、学校の避難訓練を変える(行動班)、自分たちが学んだことを伝える(語り継ぐ班) のふたつの目的のもとに活動を始めたのです。

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「この研修でもっとも意義を感じたところは、教育旅行に行く前と行った後の生徒たちの変化です」。こう語るのは、企画の立ち上げ・実施を担当したカタリバスタッフ林曜平です。

「大川小学校を見学した後のワークで、生徒全員が真剣に震災と向き合い、自分の言葉で語り合っていました。東北に行き、被災した方と語り合う。非日常の中で人の命や心に触れる経験が、こんなにも生徒たちの心を動かすとは、正直、想像以上でした」。

カタリバが届ける教育旅行は、「被災地を知る」ことが目的ではありません。震災が東北にもたらした現実をただ知るだけではなく、知った上で自分はどうするのか。「自分ごと」として物事を捉え、考え行動する「きっかけ」を届けることが最大の目的です。

「生徒のため、学校のために何ができるのか」。
カタリバではこれからもこの問いに真摯に向き合い、カタリバだからこそ届けられる学びを提供し続けることで、生徒の「生き抜く力」を伸ばしていきたいと考えています。

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【教育旅行に関するお問い合わせ先】
担当:カタリ場事業部 林 曜平
電話:03-5327-5667(平日10:00~19:00)