子どもたちに「コラボ・スクール」という場を届けるということ
先日、女川向学館のスタッフが熊本へ旅立ちました。
2012年から4年間に亘って、東北の子どもたちに関わってきた芳岡孝将さんです。
子どもたちからは、「のぶさん」の愛称で親しまれています。
のぶさんの新たな任務は、東北で培った知見と経験を活かして、熊本地震で被災した生徒たちの心のケアを目的とした学習サポートを届けること。
のぶさんが熊本に旅立つ週、たくさんの卒業生が一目会いたいと、女川向学館にやってきました。
学校生活のこと、将来のこと、今悩んでいること、真剣に話し込む姿もありました。
「のぶさんにだったら、安心して何でも話せる」
これはある卒業生の言葉です。
女川の子どもたちはいつも元気いっぱいですが、時には悩みを胸に秘めて向学館を訪れることがあります。
そんな子どもたちの小さな変化に最初に気づくのは、いつものぶさんでした。
子どもたちと真剣に話し込む姿は4年間、女川で何度も見られた光景です。
5月初め、熊本の調査のために他のスタッフと共に現地に入ったのぶさんは、被災状況の大きさから熊本の子どもたちへの支援がすぐにも必要であることを感じたと言います。それと同時に、東北の子どもたちへの支援がまだまだ必要であることを実感したそうです。
東北では震災から5年が経ち、女川の町にも少しずつ家が建ち始めています。
道には大型トラックが往来し、いままさに復興真っ只中です。
震災から5年たった現在でも、女川町の約4割の中高生は仮設住宅に暮らしています。
震災の年、小学校に入学した子どもたちは、現在6年生。
彼らは一度も通学路を歩いて学校に通ったことがありません。
津波によって町の約8割の住居が倒壊した女川は、確実に前進しているように見えますが、震災前のような日常が戻るにはまだまだ時間が必要です。
「2016年は、女川の子どもたちとこんなことを取り組もう、チャレンジしよう」
のぶさんには、やりたいことがたくさんありました。
自分が女川の子どもたちを見守り続けたい、そんな想いもありました。
女川の子どもたちにとっても、それは同じ気持ちだったと思います。
のぶさんと一緒にいたいと思いつつも、元気に送り出してくれました。
のぶさんが自分たちに届けてくれた力を、熊本の子どもたちへ届けてほしい。
そんな思いもあったようです。
子どもたちが「明日もちょっと頑張ろう」
そんな力が充電できる、安心できる場所を届けていくために。
のぶさんの思いを引き継いで、私たち女川向学館のメンバーはこれからも変わらず、子どもたちの日常に寄り添っていきたいと思っています。
そして「震災の悲しみを強さに」変えていけるよう歩んでいきます。
引き続き、東北の子どもたちを温かく見守っていただけますようお願いいたします。