被災地の教育現場シリーズ2「女川の未来は俺たちにかかっている」
佐藤敏郎先生と女川の高校3年生の対談をご紹介します。
シリーズ第2弾はこちらの彼です。
熊本で震災があった時に「みんなで物資を送ろう」と友人たちに呼びかけて、実際に物資を届けた一人の高校生がいます。まっすぐな想いをすぐさま行動に移す、強い意志と実行力を兼ね備えた彼の眼差しは、震災直後の小学6年生頃からずっと変わっていません。そんな彼が語る女川町への想いとは。
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今回はラガーマンの男子。中学時代は元気がよすぎてやんちゃな面もあったが、男気があり、みんなに慕われていた。
卒業式を間近に控えた2月末、夜の向学館に現れた彼は高校のラグビー部で3年間鍛えられ、たくましく礼儀正しい若者になっていた。でも、屈託ない笑顔はあの頃のままだ。
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■卒業おめでとう。なんか君たちが高校卒業だなんて、感慨深いなぁ。
体育館が使えず、着の身着のまま、図書室でやった入学式を思い出します。
ありがとうございます!
小学校の卒業式・中学校の入学式は体育館じゃなかったし、普段着のままだった。
中学校の卒業式は体育館で、制服着て、赤いじゅうたんがあって。「ああ、やっとちゃんと式ができた」って感動したことを覚えています。
当たり前のことが当たり前じゃなかった3年間でした。
■震災の年に入学してきた学年だから、君たちの中学時代は激動の3年間だった。私にとっても印象深い。
中学校の先生にはすごく感謝しています。今があるのは3年のときの担任の先生のおかげです。見捨てないで、とことん付き合ってくれたありがたさを高校に入ってつくづく感じました。
中学校のときは、敏郎先生もご存知の通り、悪ぶってしまったところがあります。自分をアピールしたかったのだと思います。今思うと恥ずかしいです。
■担任の先生に伝えておきます(笑)
高校時代は、ラグビーに青春をかけていたって感じ。中学の時も学校ではサッカー部だったけど、クラブチームでラグビーをしていたのだよね。
はい。中学の時、石巻のラグビークラブに元日本代表の大畑選手が激励に来た時に
「同じポジションだね」って声をかけてもらって。すごくうれしかったことを覚えています。
さっそく大畑選手の本を買って読みました。とにかくガーンとぶち当たっていくのが当時の俺のラグビーでしたが、大畑さんは「誰にも触られたくない、だから誰よりも速く走る」って言うんです。かっこいい~って思いました。
■高校では全国大会にも行ったね。
県ではいつも2位で、結局花園には行けませんでしたが、一回だけ春の選抜大会に選んでもらって全国大会を体験しました。
やっぱり全国はすごいなって思いました。
でかくて速いっていうのはもちろんですが、とにかく試合中に飛び交う言葉が違うのです。「用語」というか、きちんと指示を出し合っている。「うっしゃ~!」とかだけじゃない(笑)。
上には上があるということを身をもって知りました。すごく大きな経験になりました。
■自分にとって、向学館ってどんな場所?
普通の塾とは違う。勉強、勉強ばかりじゃない場所。あ、俺だけかな(笑)
先生方も年が近いので親しみやすい。スタッフのコウさんが「高校生になっても来いよ」って言ってくれたので、テスト前とかはよく来ていました。中学の同級生に会えるのも楽しかったです。こういう場所ってありがたいですよね。。
■去年4月の熊本・大分の地震のときもすぐ相談に来た。行動早かったよね。
東日本大震災のとき、全国から支援をたくさんいただきました。だから、熊本で地震があったとき、ツイッターでつぶやいたんです。「みんなで物資送ろう」って。そうしたら話が広がっていって。
不要な物を送ってもだめだし、送るルートも分からなかったから、すぐ向学館に相談に来ました。「こういうときは向学館だ」と思って。九州とつないでくれて、必要なものをすぐに送ることができました。
■卒業後の進路は?
土木関係の会社に就職が決まりました。4月から中部地方の現場に行きます。宮城にも現場があるので、将来的にはこっちに戻ってきたい。やっぱり女川はいいですね。
■女川はどんな町になってほしいですか?
どんどん新しい建物ができていくのはうれしいけど、あんまり変わんないでほしいという気持ちも正直あります。子どもの頃走り回った女川の風景が懐かしいなって感じるときもあります。
どんな町にっていうか、未来の町は俺たちにかかってるんですよね。
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震災直後の春休み、6年生の彼はテレビのインタビューを受けた。
「女川にずっと住む。女川のために生きる。」
まっすぐ前を見て答える少年の姿を私はよく覚えている。
それを言うと、彼は盛んに照れていたが、言葉の端々から故郷への想いが伝わってきた。
スクラム組んで、タックルかまして、これからも突っ走ろうぜ。
3月も残りわずかとなり、女川にも春の足音が聞こえてきました。
向学館は女川の子どもたちと、そして女川を巣立っていく子どもたちもずっと応援していきます。