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「女川向学館は帰れる場所」〜被災地の高校生が語るコラボ・スクール〜

2019.8.06

宮城県女川町にてNPO法人カタリバが運営する、被災地の放課後学校コラボ・スクール女川向学館。
今回は、今年春に中学校を卒業したある一人の男子高生をご紹介いたします。多くの時間を女川向学館で過ごした彼は、「まるで家みたい。家族のような人たちがいる場所。」と語ります。ぜひご覧ください!

■ 向学館にはいつから通っていますか?

震災直後、女川向学館が開校した当時から通っています(女川向学館の開校は2011年7月4日)。小学2年生だったので、これまで約8年間を女川向学館で過ごしました。


当時中学一年生(右から二人目) まだ幼さが残ります。

■ 向学館での一番の思い出は何ですか?

中学3年の3月に行った「やくそく旅行」です。この旅行では、岩手にあるコラボ・スクール2校目の大槌臨学舎の同級生たちと交流し、充実した時間を過ごすことができました。旅行先の東京では、これまで私たちを支えてくれた寄付企業の皆さんのところへ訪問したり、身の回りの課題や関心をテーマにプロジェクトを立ち上げ、実行することを通して学ぶ探求型学習 “マイプロジェクト” の全国アワードを見学したりしました。会場の大きなステージで先輩たちが自分のマイプロジェクトを堂々と発表する場面を見ることができました。旅行中には、自分自身もマイプロジェクトづくりのワークショップに参加しました。自分のやりたいことやマイプロジェクトを決めることはとても難しかったけれど、考えることは楽しかったです。これまで一緒に過ごしてきた仲間たちと旅行ができたこと自体がとても楽しく、嬉しいことでした。

それ以外でいう思い出は、小学4年生の時に教室のガラスを割っちゃったことかな(笑) 教室で遊んでいたら、勢いあまって靴が窓の方へ、、、(笑)。


当時中学二年生(左)。いつも周りのみんなを楽しませてくれるムードメーカーです。

■ 女川向学館はどんな場所だと感じていますか?

女川向学館は、英語や数学の授業はあるけれど、普通の授業とははるかに違う良さがあると思います。勉強を教えてくれるだけでなく、先生たちとの距離が近く、進路のことも同じ立場に立って考えてくれます。先生方の生徒に対しての想いがとても強いと感じています。
他にも、勉強だけでない楽しみがたくさんあります。コラボルームという部屋では、スタッフの人たちと話ができたり、友達と一緒に遊んで過ごすことができます。プロのカメラマンと一緒に写真を撮ったり、町のお祭りに自分たちで創作した料理を出店するなど、さまざまな特別授業もあります。勉強だけでなく、多くの様々なことを経験し、学べる場所です。女川向学館だけにある、すごいところだと思います。


長年共に過ごしたスタッフと。高校合格への感動も一緒に味わいました。

■ 高校に入学して、今年の7月は自分自身のマイプロジェクトを考えるスタートアップ合宿にも参加しましたね!

テーマを「女川以外から来た人たちに、女川のことを町民以上に知ってもらう!」としました。自分の故郷で震災があって、いろんなことがあったにもかかわらず、女川は8年でここまで復興しました。昔とはだいぶ変わったけれど、逆に新しくなったことで、違う良さ・魅力がどんどん見つかっていると感じています。その魅力をもっと、日本中、世界中の人に知ってもらいたいと思い、このテーマを設定しました。

アクションとしては、ただのマップじゃない特別なマップをつくろうと思っています。そのためには、まずは自分が女川について勉強しなおすことが必要です。自分の知識を深めるために、女川はどういう町なのか、改めて歴史を調べたいです。これまで何があって、今は何が新しくあるのか。比較することで見えてくることもあるはずだと考えています。行けるところには自分で足を踏み入れ、その歴史も自分の目で確認したいです。自分で町を回って魅力を探すことで、実体験として得た感動を、多くの人に、とにかく限定せずに多くの人に発信したい。どれだけ地味な場所でも、人が来ない場所でも、自分なりに発見した魅力をどんどん発信して女川の奥地まで知ってもらいたいと思っています。


マップには地図や写真だけでなく、高校生としての自分の声、そして町の人の声も入れることができたらいいなと思っています。住んでいる私たちだからこそ感じていること、見えているものも町外から来てくれた人に伝えられればと思っています。

そして、町外から来た人たちにとって女川が ”第二の故郷” になってくれたら嬉しいです。女川が何度でも帰れる場所として親しんでもらえれば、と思っています。女川の人たちはとても優しいから、町の内外の人たちが交流するような活動もいつかできるといいなと考えています。


■ 将来についてどう考えている?

具体的には決まっていないのですが、理系に進みたいなと思っています。
研究等を通して、社会の役に立つ人になりたいです。

女川に残るかは、わかりません。
すごく大好きな場所だけど、僕にとって帰れる場所であればいいと思っています。

■ 最後に改めて、女川向学館はあなたにとってどんな場所ですか?

ほぼ家ですね。(笑)
女川向学館は帰れる場所。家族のような先生たちがいつでも話を聞いてくれる。
こんな場所が身近にあることをすごく嬉しく思っています。

中学校を卒業してからも、女川向学館に元気な顔を見せに来てくれる彼。高校での勉強や部活の様子をスタッフに話してくれます。成長していく彼の姿を近くで見守れることに感謝しつつ、彼のプロジェクトの実現に向けて今後もサポートをしていきます。

女川、そして女川の子どもたちの未来に向けて、これからもがんばっぺし!