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被災地・女川で芽吹く小学生のチャレンジストーリー ~挑戦への第一歩~

2019.12.10

 つい先日まで半袖半ズボンで向学館へ登校していた小学生の子どもたちも、マフラーや手袋で肌をしっかり隠し白い息を切らしながら校舎に入る、肌寒い季節となりました。女川町でも、最低気温が氷点下となる日が続くようになっています。
 今回は、そんな寒空の中でも毎週欠かさず元気に向学館に通う、ある小学6年生の男の子のストーリーをお届けします。


 今年の4月から向学館に通うようになった彼。友達から向学館での楽しそうな様子を聞き、二つ下の小学4年生の妹とともに通うことを決めたそうです。いまでは毎週二回、自分の授業がある曜日だけでなく、妹の授業に合わせて自習室での学習にも取り組んでいます。

 ある日、友達と一緒に自習室にやってきた彼は、その日に覚えたという偉人の名言を教えてくれました。彼が黒板に書き示した言葉は、

【勉強しとけばよかったと後悔する人はいても 勉強しすぎたと後悔する人はいない】

 「その言葉、すっごくいいね!そろそろ中学3年生の先輩たちも受験モードになるから、こういう言葉が自習室に貼ってあったら元気づけられるだろうな~」とスタッフが話すと、「じゃあ・・・毎週考えてこよっか?」と彼からの提案。この日から、彼の小さなプロジェクトが始まりました。

 「小学生マイプロ・自習室 名言コーナー」と題し、自習室の壁に少しずつ名言を書いたカードが増やしていきます。

【未来があるとは、限らない。いつの時代も、いつ死んでも、おかしくない。それならば、今を精一杯生きよう。精一杯楽しもう。精一杯悲しもう。精いっぱい頑張ろう!】

【目標を達成するには全力で取り組む以外に方法はない。そこに近道はない!】

 

 はじめは自分が気に入った名言を選んでいましたが、次第に受験勉強を頑張っている中学3年生の先輩たちに向けた名言を選ぶようになりました。目的を持つことで、選ぶ観点も変わってきたようです。さらには、「この言葉にはこんな背景がいいかな…」「きちんと読めるように、文字はこのくらいの大きさがいいね」と慣れないパソコンを使いながら、背景や文字の大きさを選んで、一文字一文字、自分の手で打ち込むようになりました。

 その成長には、スタッフも驚くほど! 「いつも名言楽しみにしてるんだよ!大人の私たちにも響く言葉なんだよね。」とスタッフに声をかけられると、彼は照れながらも嬉しそうな表情を見せました。続けていくうちに、彼にとっても大きなやりがいとなっていたようです。

 このプロジェクト以外にも、彼はさまざまなことにチャレンジを続けています。ある日、”ポイ”と呼ばれるジャグリングの道具のひとつを手に向学館へと登校した彼。小学校の学芸会の演目として練習をしていたようで、「見て!見て!」と向学館でも披露してくれました。


 スタッフだけでなく、廊下を歩く中学生の先輩たちにも「すごいな~!」と声をかけられ、満足げな様子。自分のやりたいことにチャレンジできる、頑張ってチャレンジしたことを認めてくれる人がいる。彼にとって、向学館はそんな場所になっているようです。

 「勉強は、苦手なんだよね~」とスタッフに打ち明ける彼も、次第に授業にも一生懸命に取り組むようになりました。普段からとても仲のいい小学6年生のクラスの仲間たちと、時には笑いもありながらも、集中して先生の話を聞いたり、iPadでの自律学習に取り組んでいます。


▲思い切って、授業中に挙手する姿も!

 「あなたにとって、向学館はどんな場所?」とスタッフが問いかけると、彼はこう答えました。

 「みんなと楽しい時間を過ごせる場所。勉強だけじゃなくて、いろんな人と出会えることが楽しい!」

 友達はもちろん、なんでも話せるスタッフの存在、そして自分たちを応援してくれている人たちとの出会いを通して、自分に自信を持ち、挑戦する一歩を踏み出すことができているようです。

 彼だけでなく、向学館で過ごす子どもたちは日々の学習や自分なりのチャレンジに向き合っています。そのチャレンジをサポートする存在として、スタッフは子どもたちとナナメの関係を築いています。向学館は、これからも子どもたちの安心安全を守り、子どもたちのチャレンジを全力で応援していきます。

 来年4月には、彼も中学生になります。桜が咲くころ、彼はどんな姿になっているのでしょうか。引き続き、女川向学館は彼の挑戦を見守り、応援を続けていきます。