「実際に手を動かすことを大切に」女川向学館の美術の先生的な存在・加藤さん
日差しに暑さを感じる日もありますが、朝晩はぐっと冷え込み、秋が深まる女川。
夏休み明けの子どもたちは、ちょっと大人になったような、小学1年生・中学1年生は学校生活に慣れてきたなと感じる9月です。
今年から土曜日を開館して、教科学習以外の体験ができる「土曜日プログラム」を開催している向学館。今回は、その「土曜日プログラム」で、『美術の先生的な存在』の”かとくるさん”のご紹介したいと思います。
加藤くるみさん。宮城県角田市出身で、女川町の隣町・石巻市にある『NPO法人 かぎかっこPROJECT』のスッタフとして働かれる傍ら、毎週土曜日に向学館に来て、工作やデザインプログラムを企画してくれています。みんなからは、”かとくるさん”とか”くーちゃん”、時々”かときちさん”とか、いろんな名前で呼ばれて親しまれています。
デザインが得意で、やわらかい色合いと、ゆるさがかわいいタッチの絵で、向学館のポスターもつくってくれます。デザインスキルを活かして、これまで向学館に通う子どもたちへステッカーづくりやマグネットづくり講座を開いたり、お絵描きが好きな子のイラストをアレンジして飾りやシールを作ったり・・・女川向学館の『美術の先生的な存在』です。
加藤さんは以前より女川向学館と関わりがあり、向学館のフリースペースでイベントを行ったり、活動紹介パンフレットをつくったりしてくれていました。
「数年前に向学館のみんなと、ミニ四駆レースをしたのが思い出に残っています」
ミニ四駆を作って、その上にマスコットを乗せて走らせて、みんなで「がんばれー!」と応援して、思いを共有したのがたのしかったとか。
「テレビゲームやスマホゲームではなくて、自分たちでつくって遊ぶというのがいいですね。ゲームだと、強いキャラがいて、それで戦えば勝てるというのがわかる。でも、ミニ四駆づくりのように、実物のモノを使った遊びは、こうじゃない、ああした方がよさそうと、実際に手を動かすことを通して、トライ・エラーが感じられるのがいい」
実際に手を動かして、トライ・エラーを感じることがいいと思うようになったのは社会人になってからだそう。
「大学生までは、”これが好き!これは得意!”と言えるものがなくて。社会人になったばかりの頃は、自分にできることがない・・・と思ってしまった」
「ある時、かぎかっこプロジェクトで関わる高校生の似顔絵を描いた時、味があっていいねと上司が言ってくれて。そして、その似顔絵をノベルティにして、高校生にプレゼントした時は、うれしかったです」
絵をもともと習ったことはないという加藤さん。朝に絵を描く練習の時間をつくってみたり、とにかく描いてみたい絵を描いてみてる、実際に手を動かしてみる、ということを重ねていくことで、マイ・スタイルをつくっている。
加藤さんが企画してくれるイベントは、工作だったり、絵を描いてみるなど、実際に手を動かして、まず形をつくってみることから始める。加藤さんの話を聞きながら「手を動かすこと」を大事にしているんだな、と感じました。
最近、向学館での活動でうれしかったことは、向学館でステッカーのデザインをつくっていたのを見た高校生が、自分も作りたいとデザインをiPadで作り始めたことだそうです。
「最初は『かとくるさん、作ってー!』という感じだったけれど、だんだん自分でiPadを使って文字やデザインを作り始めたのは嬉しかったです」
その高校生は、最初は自分で使うステッカーを作っていたのですが、最近では知り合いの人のステッカーもデザインしているようです。
「今はイベント的にデザイン講座をしているけれど、子どもたちそれぞれが、自分たちが作りたいものを気軽に作ることができる環境をつくっていきたいです」