【大槌臨学舎卒業式】一歩一歩、小さくても、着実に。
厳しい冬の寒さも和らぎ、ようやくあたたかい風が吹くようになった大槌町。
そんな、春を感じる3月19日、コラボ・スクールに通う中学3年生の臨学舎卒業式が開催されました。
毎年会場をお貸しいただいている吉祥寺さんに、今年もお邪魔しました。
今年の卒業式のテーマは「ジブンゴト化0学期」。
「友達がやっているから、やってみようかな」
「親や先生が言うから、仕方なくやるか・・・」
「この町には◯◯がないから、XXができない」
など、自分の行動や決断をまわりの環境に依存させる生徒が臨学舎には多い。
そんな課題意識から、このテーマが設定されました。
「自分の人生の”主人公”はほかの誰でもない、自分、であることを理解しよう。」
「ひとつひとつの行動を、自分の本心、自分の意志によって、選ぼう。」
目の前の高校生活に対し、「自分の毎日を楽しくするのは、自分次第!」そう思えるようになることが、今日のゴールです。
* * *
まずは、ワークシートに沿って、中学生活を振り返ります。
こんなこともあった、あんなこともあった、、、
生徒たちがそれぞれの担当の先生に中学校生活の思い出を話しながら、その時々の自分の想いを思い起こし、言葉にしていきます。
そんな中、悩みながらペンを走らせる1人の内気な女子生徒がいました。
「部活や勉強ばかりの日々だった。勉強は、したくなかった。」
高校生活で取り組みたいことも、具体的にはイメージできない様子。
ワークシートを書き終えたところで、先輩方の「カタリ場」が始まりました。
話をしてくれるのは、コラボの卒業生、バスの運転手さん、教育委員会の方、コラボの先生たち、、
さまざまな先輩たちです。
「3人で仲良しグループだったんだ。だけど、だんだん、その中で自分の居場所が無くなっていった。すごく居心地が悪かったけれど、嫌われたくなくて、1人になるのが怖くて、我慢してた。」
コラボの卒業生である先輩は、高校生活で起きたある出来事について語ります。
「だけど、ある日決意した。そんな、いても楽しくないグループ、出て行こう、って。それで、思い切って、グループの2人に合わせずに、自分のやりたいように、単独で行動してみたんだ。」
自分を制限して生きていた日々から、思い切って自分のやりたいように動いてみた先輩。そこから広がった、新しく楽しい日々。
* * *
そんな先輩の話を聞いた彼女は、
「共感できた。私にも、やれることがあるかもしれない。」
担当の先生が問いかけます。
「何ができそう?何がしてみたくなったの?」
「今までとは違う友だちを作ってみたい。」
思えば、彼女が臨学舎で勉強しているとき、隣にはいつも決まった友達がいました。
ひとりきりで自習室に来ることはなく、その友達が帰る、といえば一緒に帰る・・・
周りに合わせて行動してきた彼女から、こんな言葉が出てくるとは。
「そうするためには、具体的に何ができるかな?」
先生と一緒に思いを深掘りしていく彼女。
「自分から話しかけるのはむずかしい。でも、笑顔でいることはできる。そうしたら、話しかけやすい人になれるかも。」
「そうだね、そうしたら、まずは笑顔でいることから始めよう。」
約束カードに、「笑顔でいる」。そう記しました。
* * *
そして卒業式は後半へ。
臨学舎での日々を振り返るムービーを見た後、先生たちも含めた参加者全員で車座を作りました。
「今の素直な想いを共有しよう」。
話し手が何を言うかは、自由。そして、聞き手は、必ず盛大な拍手でエールを送る。それがこの場の約束です。
積極的な生徒たちは、どんどんと挙手をして発表していきます。
「コラボに入る前は勉強が嫌いだったけど、コラボに入ってから、友達もいたし、勉強をがんばるようになりました。ありがとうございました。」
「コラボに来るのは、いつもめんどくさかったです。最後まで、めんどくさかったです。」
コラボでの思い出を真面目に語る生徒。照れくさそうに、面白おかしく語る生徒。
さあ、次は誰が手を挙げるかな?私、話そうかな、僕、行こうかな、、、。 緊張感とともに場もだんだんと盛り上がります。
普段はとっても内気な彼女。少人数のグループの中で話すことも苦手で、1対1になってようやく言葉を発するような生徒です。
でも今回はなんだか、そわそわ・・・
隣の先生が声をかけます。「勇気を出して、伝えてみたら?」
すると、スッと手をあげました。
そしてその場で立ち上がり、
「はじめはコラボ、居づらいなと思ったこともありました。でも、だんだんみんな話しかけてくれたり、友達も増えて楽しかったです。コラボ、通ってよかったです。」
彼女が語ったのは、感謝でした。
勇気をもって手をあげて思いを発表した彼女には盛大な拍手が送られました。
内気な彼女が人前で大きな声でなにかを発表するなんて、正直コラボのどの先生も、彼女のどの友達も、想像していなかったことです。
けれど、卒業式のプログラムを通して、自分のやってみたいことに気付き、挑戦したいことを言葉にし、最後には勇気を持ってみんなの前で自分の思いを発表した彼女。
自分の足で、自分の今後への一歩を、踏み出したのです。
* * *
「ジブンゴト化」
自分の毎日を、自分で作っていこう。
一歩一歩、小さくても、着実に。
彼女はきっと、笑顔で高校生活をスタートさせることでしょう。
この春、高校生活を始める全ての生徒たちの毎日が、すばらしいものとなりますように!
卒業、おめでとう。