【大槌臨学舎】今だからこそ必要とされる心のケア
「城山!景色がいいんだよ」
「でも、今は建物がない」
先日お伝えした、春のガイダンスで、生徒たちに大槌町の好きな景色を尋ねた時、こんな答えが返ってきました。
何気ない会話の中で、私たちは思いがけず、震災について考えさせられることがあります。
5年前、ガレキで埋め尽くされた町も、今はすっかり様相を変えました。
見渡す限り、かさ上げ工事のまっ最中。確かに、何も「ない」状態と言えるかもしれません。
▲城山から見た町(2016年5月23日撮影)
今回は大槌町の今と子どもたちの様子を、レポートしたいと思います。
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教室にまで届く、ショベルカーやダンプカーの大きな音。最近はそれに混じって、大工さんが釘を打つ音も聞こえてくるようになりました。
町には、真新しい家が増えてきています。
その一方で、仮設住宅での暮らしが続く住民は未だに3割。
津波被害を受けた岩手県沿岸部の地域の中で、最も高い数字を示しています。
また、地震の揺れに過剰な不安を覚える子や、精神的に不安定な子など、何らかのサポートを必要とする子どもは、町の児童生徒全体の2割に上るとの報告もあります。
環境の変化や長引く仮設住宅での生活が、この数字にどれだけ作用しているのかは計り知れませんが、少なからず影響を及ぼしていることは明らかです。
1995年に発生した阪神淡路大震災では、震災の5年後に子どもたちの問題行動が最も増えた、ということを聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
今は問題がない子どもたちも、それぞれの成長による変化や、周囲の影響を受けて、新たな困難を抱えることがあります。
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町や学校は、児童生徒のこころのサポートに全力を投じています。
しかし、町や学校のみならず、できるだけ多くの大人が、継続的に子どもたちをサポートしていくことが必要です。
今年の3月にも、震災の日が近づくにつれ、いつもの明るさが消え、不安定な状態になる子どもが見受けられました。
しかし、子どもたちが普段の生活の中で震災の話をすることはまずありません。むしろ、震災の話が半ば「タブー」として、触れてはいけないものになっているようにも感じます。子どもながらに、周囲に気をつかっているのです。
私たちは、「被災者ではない」という立場からも、子どもたちの力になれるかもしれません。
日常的に、継続的に子どもたちに関わるチャンスがあるからこそ、大槌臨学舎では可能な限りのサポートをしていきたいと考えています。