ようこそ、大槌へ〜感謝を込めて伝える私のこと、町のこと〜
短い秋が終わりを告げ、早くも冬の足音が近づく大槌町に、お客様がいらっしゃいました。
2011年の開校当初から継続してコラボ・スクールにご支援をいただいている、
サッポロホールディングス株式会社(本社:東京都渋谷区)(以下、サッポロ)の皆様です。
お越しいただいたのは、取締役の野瀬 裕之様、グループCSR部部長の八木 啓太様、東北本部マーケティング部専任部長の佐藤 守様のお三方です。
サッポロの皆様には今回、9月に東京で開催された「恵比寿麦酒祭り」での生ビールの売上から、900万円のご寄付をいただいております。
「ただ寄付をするだけでなく、現地の今を自分たちの目で確かめたい」という熱い思いから、
毎年コラボ・スクールにて開催される贈呈式に、足を運んでくださっています。
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この日のために、臨学舎へ帰ってきた卒業生が二人。
佐々木瞳さん、そして、釜石望鈴(みすず)さんです。
二人は、サッポロの皆様への感謝の気持ちを込めて、自分たち自身の成長と現在の町の様子を伝える企画を用意してきました。
贈呈式の終盤、瞳さんが感謝の手紙を読みあげました。
「臨学舎へやって来たばかりの自分は引っ込み思案で目立たない生徒でした」
そう振り返った瞳さんでしたが、
「いろいろな大人と関わる中で、自分も何かやってみたいと思いました」
その気持ちが、実家の鮮魚店を盛り上げようと始めたプロジェクト「ひびき通信」の取り組みへとつながり、
今通う大学を目指すきっかけにもなりました。
地元を離れて半年。
大学ではこれまでとは違う多くの刺激を受け、授業の中でプロジェクトのリーダーに立候補したことも。
「正直、力不足を実感することのほうが多いです」
そう語りながらも日々成長を続ける瞳さんの目は、まっすぐと未来を見据えていました。
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贈呈式を終え、サッポロの皆様と共に大槌の町へと繰り出します。
最初に訪れたのは、町内中心部の高台「城山」です。
震災当時、多くの人々がここから町の様子を見下ろしました。
「我々は、テレビの中で見た凄まじい光景しか知らない。
当日、ここにいた人たちはどのような話をしていたのか」
サッポロ・野瀬様の問いに対し、瞳さんが答えます。
「当日は誰も、何が起こったのかはっきりとわかっていなかったんです。
夜が明けて、町に起きたことを初めて理解しました」
あの日から5年半、刻々と変わりゆく町の様子を望みます。
そんな城山から見える場所に、瞳さんの実家が営んでいた「ひびき鮮魚店」がありました。
その思い出の地で瞳さんは、高校時代に取り組んだ「ひびき通信」プロジェクトを紹介しました。
お店、ひいては大槌の魅力を全国に発信したい、という思いから始めたこのプロジェクト。
手作りの冊子「ひびき通信」をお店の魚介商品セットに添え、県外のお客様に購入してもらう仕組みです。
お客様に事前にいただいたアンケートから、家族構成や好みを把握した上で、商品を組み合わせる工夫をしました。
「ひびき通信の取り組みも素晴らしいけれど、ヒットしたのはお店の味が美味しかったからこそだろうね」
八木様の一言に、
「お店の味を守れるようにがんばります!」
笑顔で答える瞳さんでした。
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続いて訪れたのは、吉里吉里海岸。
ここで、吉里吉里出身の釜石みすずさんが高校時代に取り組んだ「100人photosプロジェクト」を紹介しました。
プロジェクトの始まりは、大好きな写真を通して町の人々を元気づけたいという思いからでした。
多くの写真を津波で流されてしまった町の人々。
その姿を写真に収め、アルバムを作成して配布したのです。
「自分のやっていることは正しいのか?
不安にかられ、思うような活動ができないこともありました」
そんな時、声をかけてくれた街の人の一言に救われたのだと言います。
「あの時、写真を撮ってくれた子だよね?ありがとう」
この言葉を受けて、みすずさんは一度は辞めていた活動を再開しました。
みすずさんも瞳さん同様、目立つタイプの子どもではなかったと言います。
「人は人で変われるんだ、と思った」とみすずさん。
写真を通して大槌を活気づけようと、今も活動を続けています。
町案内を終え、あっという間に迎えた終了の時間。
瞳さんの実家「ひびき鮮魚店」のお弁当を、お土産としてお渡ししました。
瞳さんのプロジェクト、「ひびき通信」の特別号も添えられています。
「このお弁当のラベルに書かれている住所は、昔のお店のままなんです。
いつか、元の場所で再開するんだという思いがこめられています」
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瞳さんが読み上げた感謝の手紙は、こんな言葉で締めくくられていました。
「コラボスクールという場所を、自らの力で繋げていくこと、これが私の目標です」
力強くそう語ってくれた瞳さんも、故郷で活動を続けるみすずさんも、元はといえば、ごく普通の子どもたちでした。
彼女たちのような未来を担う子どもたちを育むため、いただいたご寄付を大切に使わせていただきます。
遠路はるばる大槌までお越しいただいたサッポロホールディングス株式会社の皆様、本当にありがとうございました。