臨学舎1期生の成人式
2017年、あけましておめでとうございます。
年が明けた1月4日、大槌臨学舎では毎年恒例となった、小鎚神社への初詣に行ってまいりました。
小鎚神社の隣にあるのが、「上町ふれあいセンター」です。
ここは、大槌臨学舎のスタートの地でもあります。
5年前の12月13日、初めて臨学舎にやってきたのは約80名の中学3年生でした。
そんな、臨学舎にとっての「
震災当時は中学2年生。
慣れ親しんだ故郷をなくし、親しい人をなくし、混乱と絶望のなかで、高校受験に立ち向かった子どもたちです。
彼らの成長を、当時の写真と共に振り返ります。
やんちゃなお調子者だったあの子も、今では立派な大人の仲間入り。
「仲間思い」の優しいリーダー、小原祐也さんもその一人です。
中学時代から相撲部だった小原さんは、名門・日本大学の相撲部で活躍する大学2年生に。
「お久しぶりです!」と元気よく声をかけてきてくれた元生徒もいます。
隣の釜石市にある工場へ勤める、 藤原雄大さんです。
「嬉しいですね、こんなところで会えるのも」
当時のスタッフにそう話す藤原さんの表情には、笑顔がこぼれます。
マイプロジェクトで活躍する吉田優作さんも、今年成人を迎えました。
「消防士になる」という夢をかなえるべく、遠く千葉の大学で勉学に励んでいます。
今年の3月11日には、4年前に吉田さんが建てた「木脾(もくひ)」の初めての建て替えが控えます。
地元を離れ、足繁く通うことができないもどかしさに頭を悩ませながらも「やるからには思いをこめてその日を迎えたい」。
「震災を風化させたくない」という思いは、4年後の今も変わっていません。
仲良し2人組は、5年経っても一緒。
「当時は控えめで、人見知りな中学生でした」と振り返るのは、佐々木佳奈さんです。
受験を控え、毎日日課のように臨学舎に通いつめる日々。
支えになったのは、多くの仲間だったといいます。
「学年のほとんどの子が通っていたので・・・友だちに会えるのが楽しみでした」
印象的だったのは、受験直前のあるイベント。
「みんなでお寺に集まって、カレーを食べましたね。先生から合格祈願の鉛筆やメッセージをもらって。嬉しかったなあ」
高校に上がった後も、英会話や自習室で臨学舎を訪れることもあったという佳奈さん。
現在は管理栄養士を目指して入学した短期大学に通うため、青森で一人暮らしです。
「盛岡に就職しましたが、本当は大槌がよかったんです。でも働くところがなくて」
地元が大好きだという佳奈さんは、「いつか大槌に戻りたい」という思いを抱いています。
「何もないけれど、みんながいる大槌が大好き。慣れ親しんだ故郷に戻ってきたい」。
* * *
当時のスタッフが「真面目な好青年。1日も休まず臨学舎へ通いつめた」と評する後藤拓人さんも、大槌という町が大好きだといいます。
「当時はあんな状況で、とても勉強する意欲なんてわかなかった。
それが、コラボという新しいコミュニティができて。コラボの先生たちとの出会いが、その状況を変えてくれたと思います」
卒業時に行った「やくそく旅行」も思い出の一つ。
「東京証券取引所を見たり、大企業の方々にお会いしたり。今となっては絶対にできない経験なので、本当に貴重だったと思います」
後藤さんは、大学卒業後に町へ戻ることを心に決めています。
「実家が建設系の仕事をしていて。ただ、親には好きなことをやれ、と言われてきました。
でも、震災が起きてから、役に立てるチャンスなんじゃないかな、と思うようになって」と後藤さん。
復興の「礎」を築きたい、という言葉が印象的でした。
* * *
あの日、絶望の淵に立たされた14歳。
彼らは今、ひたむきに前を見つめています。
彼らの20年を振り返るとき、「あの時」が語られないことはありません。
「被災地からの脱却、そして飛躍を」という町長のことば、
「大槌町の復興に貢献したい」という成人代表のあいさつ。
「震災を経て、生きる大変さとありがたさを実感した」彼らだからこそ持っている力があります。
「過去は変えられないが、未来を変えることはできる」。
成人式の終わりは、ある大人のそんな言葉で締めくくられました。
これからは「仲間」として、成人を迎えた元生徒たちと共に大槌町の復興を支えていこうと思います。