【被災地・大槌町より】ずっと、応援している人がいる~帰ってきたインターン生
夜の気温は氷点下。岩手県大槌町に、長い長い冬が来ました。
冬の訪れとともにやってくるのは、受験勉強の日々。
カタリバが運営するコラボ・スクール大槌臨学舎の中学3年生も、先日紹介した女川町の中学3年生に負けず劣らず、受験に燃えています。
今年のテーマは「合格+α(アルファ)」。
単なる合格ではなく、自分にしか得られない「何か」を手にするために、子どもたちは「自己ベスト」を合言葉に日々の勉強に取り組んでいます。
そんな中学3年生に、熱心に勉強を教えるある大学生の姿が。
今年6月~9月の3カ月の間インターンに参加し、今再びボランティアとして協力してくれている千葉菜央(ちば なお)さんです。
今回は、そんな千葉さんのコラボ・スクール体験記をお届けします。
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大学3年の千葉菜央と申します。出身は岩手県奥州市、高校までずっと岩手県で育ちました。秋田にある大学では、主に教育を学んでいます。
今年の1月から11月までアメリカに留学していたのですが、夏休みの期間を利用し、インターンとして臨学舎でお世話になりました。
ちょうど11月末に留学を終え、1か月間の休みを利用して、ここ大槌に帰ってきたところです。
東日本大震災当時、私は中学2年生でした。岩手県にいて強い揺れは感じたものの、大きな被害は受けておらず、自分が被災者と呼ばれることに違和感を覚えていました。
■インターンに参加した理由
そんな故郷・岩手への思いとともに、自分は教育専攻であるにも関わらず、実際の教育現場に深く携わったことがないことを引け目に感じていました。そこで3か月の夏休みをいい機会ととらえ、生徒と長期的に関われる場所でインターンをしようと決めました。
教育関連の団体を調べていたのですが、カタリバの「ナナメの関係」というキーワードに惹かれて、コラボ・スクールのインターンに応募しました。
■大槌臨学舎で出会った生徒たち
大槌臨学舎には、様々な生徒がいます。中には、深い悩みから抜け出せない子どもたちも。
被災地だから、ということももちろんありますが、地方だから、大槌だから、ということもあるように感じています。
例えば、勉強もスポーツもできて、みんなと仲がいいのに自信を持てないAさん。優等生であるがゆえに周りから疎まれることもあるようで、私に褒められたときについ涙ぐんでしまったこともありました。引け目に感じるようなことはしてないよ、せっかく素敵な人なのだから自信を持ってね、とずっと声をかけ続けています。
初めてBさんに会った時にはびっくりしました。女の子なのですが、言葉使いや態度が乱暴だったのです。でも、幼い頃に震災を経験したこともあって、愛情不足なのかもしれない…と途中で気づきました。そんなBさんにも声をかけると笑顔になる瞬間があります。
乱暴な言葉や態度は、自分を見て欲しい、という気持ちの裏返しなのだと思います。どんな子どもにも、諦めずに声をかけ続けることが大事なんだと気づかされます。
■インターン経験で得たもの
夏期講習では、自分の特技を生かして「ノート講座」をしました。
自分の得意分野を、生徒にとってプラスになる形で伝えられたのがとても嬉しかったです。
それから、夏休み中に小学生が通う、「学びの場」の運営に携わることができたことも大きかったです。朝は小学生を学年ごとに並ばせて、授業の時間は4年生クラスの副担任として、子どもたちと関わりました。
実は私はそれまで子どもたちと関わった経験があまりなかったので、直接的に関わることには苦手意識を持っていたのですが、子どもたちと毎日、他愛もない話をしながら、宿題を手伝ったり、大槌検定の受験を見守ったりするうちに苦手意識はすっかりなくなって、毎日4年生に会うのが楽しみになりました。
■自分自身の変化
来たばかりの頃は、いわゆる「お客様目線」で、「自分が中学生の時にこんな場所があったらよかったのに」という思いのほうが強かったように思います。
それが次第に「スタッフ目線」になって、「あの子は今日どうしたんだろう」といった視点に変わっていくことを実感。それは自分にとって面白い変化でした。
先に、自分が教育専攻だという話をしましたが、ここでインターンをする前までは、教育についてぼんやりとしたイメージしかなかったんです。だから授業で「生徒」「児童」と聞いても、具体的な子どもの姿はちっとも思い浮かばなくて。
でもインターンの経験を経た今は、留学先の学校の授業で小学生の事例が出てくれば、大槌の小学生のことがぱっと頭に浮かびます。学びに具体性が与えられると、学びの幅はこんなにも広がるんだと感じています。
■そして再び
3カ月のインターンを終えた私は留学先へ戻り、勉強の日々が再開しました。でも、インターンを終えた時から、あることが心に引っかかっていたのです。
一つは臨学舎の子どもたち。子どもたちは、臨学舎では先生(ボランティアの方々)の入れ替わりが激しいということを知っています。
私も、初めて会ったある生徒に「いつまでいるの?」と聞かれました。「またすぐいなくなっちゃうんだろう」という生徒たちの予想をいい意味で裏切りたいと思ったんです。
少し回りくどい方法ではあるけど、「君たちの頑張りを応援したくて、何度も来る人がいるんだ」、ということを知ってほしいと思いました。
そして、コラボのスタッフのみなさん。これから受験に向けて忙しくなっていくというのに、自分が抜けてしまうことがとても情けなく思ったのです。
自分は夏の間にたくさん学ばせてもらったので、今度は自分が恩返しする番。子どもたち、そしてスタッフのみなさんにもう一度会うために、私はこの場所へ戻ってきました。
■今回のボランティアの意気込み
前回来たときは臨学舎に慣れることや、夏期講習の準備でいっぱいいっぱい。余裕がなかったので、今回はゆとりをもって生徒やコラボという場所に向き合いたいです。
また、インターンの3か月ではすべての生徒のことを「よく知る」ことができなかったので、今回は特に受験にむけて頑張る9年生と関わって、全力で応援したいと思っています。
インターンとしてお世話になっていた間、たくさんのボランティアさんとお会いしました。
はるばる九州からやってきた教育専攻の大学生、被災地の現状が知りたくて来た方、中学生の時に被災した経験から被災地支援を志した方…。皆それぞれ多様な考えのもと大槌にやってきましたが、その誰もが自分なりの学びを得て帰っていったように感じました。
大槌の子どもの学びを応援し、自らも成長できる場所、臨学舎はそんな場所です。新しい環境に飛び込むのは勇気がいりますが、臨学舎でのボランティアはきっといい経験になると思います。
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コラボ・スクールでは、インターン・ボランティアに参加してくださる方を随時募集しています。特に、受験期真っ只中の2~3月に協力いただけるボランティアさんが足りていません。
みなさんも、コラボ・スクールで子どもたちや町の課題と向き合ってみませんか?興味のある方はぜひこちらから個別説明会にお申し込みください。