地域での学びが自分の力になる〜東北の高校生が、自分の成長に気づくとき〜
NPOカタリバの運営する放課後学校「コラボ・スクール大槌臨学舎」がある、岩手県大槌町。
東日本大震災から7年が経ち、日々、新しい道路、新しい建物が姿を見せています。
先月、そんな大槌町に新たな文化交流センター「おしゃっち」がオープンしました。
図書館や会議室、展示室などがあるこの新たな町の拠点で、「大槌町高校生マイプロジェクトアワード」が催されました。
今回は、このアワードに出場した1人の女子高生、岩間美由紀さんのストーリーをお伝えします。
イベント当日の様子はこちらをご覧ください。
きっかけは”高校生活への期待”
マイプロジェクトとは、自分のやりたいことや身の回りの課題解決に取り組む、自分発の活動。そんな活動を始めるきっかけになったのは、高校入学を前に、自分を見つめたことだといいます。
マイプロジェクトの概要と詳細はこちらをご覧ください。
「コラボスクールに通い始めたのは、中学2年生のとき。友達に誘われて入りました。
当時の自分は人に流される性格。人前で話すことが苦手で、授業中も手を挙げて発言することさえできませんでした。」
美由紀さんの中学生の頃は、内気で、スタッフが話しかけても照れくさそうに微笑む生徒。
そんな彼女は、中学校を卒業して高校生になる頃、少しずつ心境が変わってきました。
「高校生になったら自分で決める機会が多そうだなって。自分でも何かできるかも、と思いました。」
関心は、身近な家族のことから地域の課題へ
「はじめに身の回りの関心ごとを考えた時、思いついたのがおばあちゃんでした。」
ばあちゃんを元気にしたい、笑顔にしたいという想いから始まった美由紀さんの『ばあちゃんSmileプロジェクト』。
この「ばあちゃん」との交流を深めるプロジェクトを実施した彼女は、「全国高校生マイプロジェクトアワード2017」で、全国サミットに出場、発表しました。
それから数ヶ月、このプロジェクトは次の活動へと進んでいます。
笑顔を届けたい相手は、「ばあちゃん」から地域の高齢者へ。
「”笑顔”は楽しいと思ったときに出る。
おばあちゃんとの交流を深めていったとき、町で1人暮らしをしている高齢者は寂しいんじゃないかなと思いました。
仮設住宅団地の集会所でイベントを実施したのは、仮設住宅団地の自治会がなくなって、イベントをやる人がなくなってきたと聞いたから。人と話す時間をつくりたいと思いました。」
震災から7年経ったいま、町内にはいまだに高齢者を中心に15%の町民が仮設住宅で暮らしています。
徐々に持ち家再建や災害公営住宅への転居が進んでいる一方、残っている仮設住宅に住む人々の中では、自治会組織の消滅が新たな課題となっています。特に自分の足で遠出はできない高齢者は、家の外に出歩く機会、他人と交流する機会が減っています。
「イベントをやってみて、高齢者と若者の交流の機会が大切だと気づきました。」
と語る彼女は、大槌町内の他の地域でも開催していきたい、と次の活動を見据えています。
身の回りの課題からスタートした彼女のマイプロは、次第に社会課題の解決にも繋がってきました。
マイプロで変わってきた自分
「マイプロの魅力は、自分の思いを伝えることができること。
自分がプレゼンをするなんて考えたこともなかったけど、マイプロを始めてからプレゼンする機会が多くなった。
そのおかげで人前に出ることにも慣れて、だんだん自信がついてきました。」
共にマイプロに取り組んでいる仲間も「美由紀は変わった」と、自他共にその成長を感じています。
今回のアワードでは、プレゼン中のトラブルを1人で冷静に対応した一幕もありました。
1つひとつの経験を学びにする
「マイプロをやってきて、視野が広がった。全国の友達ができたし、自分との違いを発見できていい出会いだった。」
さらに彼女は、「自分の想いを伝えて、反応をもらえることが嬉しい 」と、これまでのプレゼンの機会の度にもらってきたメッセージカードをノートにまとめていました。
1つひとつの活動を丁寧に振り返る彼女は、たくさんの経験を自分の学びにできている様子。
どんどん変化を見せる彼女のこれからの活動と、ますます成長していく姿が楽しみです。