【被災地・大槌より】大槌の珍味”コワダ”をご賞味あれ!女子高生による町の課題への挑み方
認定NPO法人カタリバが運営する子どもたちの放課後の学びと居場所「コラボ・スクール 大槌臨学舎」は、岩手県大槌町にあります。
雨模様の蒸し暑い7月末、大槌町内は町の恒例のお祭りで盛り上がっていました。
「いらっしゃいませ〜!大槌の珍味の“コワダ” 、いかがですか〜?」
多くの屋台や物産店が立ち並ぶ中、女子高生らによるお店がありました。
コラボ・スクールに通う高校2年生、佐々木加奈さんによるお店です。
■三陸の珍味「コワダ」をお祭りで宣伝
加奈さんが売っていたのは「コワダ」。
コワダとは、マンボウの腸のことです。
コリコリとしている食感が三陸地方の珍味として地元の人に親しまれていますが、他地域ではほとんど知られていません。
「お祭りで大槌の特産物を宣伝するために出店したいと思った時、母に相談したらコワダが良いんじゃない?って。実は私もそれまでコワダのことは知らなかったんです。」
と加奈さんは言います。
そこで、まずはそのコワダを食べてみたそう。
「1口食べて生臭かったけど、いろいろな調味料で試食してみました。いろんな味を試して、最終的に4つの味付けに決めました。」
とのこと。
販売した味付けは、「醤油とバター」「醤油とマヨネーズ」「ケチャップとマヨネーズ」「一味唐辛子とマヨネーズ」でした。
この試作をしたのがお祭りの1ヶ月前。
そこから準備を進め、前日は朝から夜遅くまで仕込みの作業を行いました。
加奈さんは友人らと協力し、このコワダにイカやパプリカなどを添えたセットをおよそ200食以上用意し、売り上げました。
■町に「個人商店」の少ないことが気になった
この出店をした背景には、加奈さんのある思いがありました。
それは「大槌の個人商店を盛り上げたい」という想い。
加奈さんはこの想いを持ち、マイプロジェクトの活動を行っています。
マイプロジェクトとは、自分のやりたいことや身の回りの課題解決に取り組む活動のこと。(マイプロジェクトの詳細はこちら。)
「なにか活動をしたいと思った時に、大槌町内で気になることってなんだろう?と考えた。その時に、町の個人商店が少ないなあ、さみしいなあ、と感じた。」
と加奈さん。
加奈さんの祖母が鮮魚店を営んでおり、幼い頃からそのお店を手伝ってきたそうです。
「震災後、再建している店もあるけれど、もともとお店をやっていた人がまたやりたいと思えたらいいなあ。そのために、どんな課題があるのか、どんな解決策が考えられるのかを知りたい。」
そんな関心を持っている加奈さんは、いま大槌町内で個人商店を経営している人のお手伝いをしながら、その調査を進め、ヒントを探しています。
今回の出店も、自ら企画書を書く、役場に提出する、材料を調達する、人を集める…
といった具合に、自分でお店を開くとはどんな作業が必要なのかをよく知ることができる経験になったようです。
■コラボ・スクールは視野を広げる場所
「この活動をやって、ちょっとだけ受け身じゃなくなった。
まずは自分で企画しなければならないし、活動するにはどうしても受け身ではやっていけないと気づいた。そうすると、自分でやっていることだから、人前で活動を発表する時も実感をもって説明できる。」
活動を発表する経験を重ね、だんだん緊張せずに、即興でコメントできるようになったとのこと。
学校生活でも生徒会で活躍する加奈さんは、いろんな場面で自分の意見や感想を言えるようになったと、実感をもっている様子です。
加奈さんの保護者の方は、
「本人は悩みもたくさんあったみたいです。けれどそんなときに、町内のいろいろな人と会って話を聞いていくことで、方向性が決まっていったようです。『やりたいことが見つかったらやるしかない!』と一直線で取り組めるのが加奈のいいところ。温かい目で見ています。」
と、教えてくださいました。
1番身近にいて応援しているからこそ、静かに見守っていらっしゃいました。
「マイプロやコラボ・スクールは、新しい考えが見つかる場所。
自分の意見を言って反論をもらって何も言えないのは、自分の視野が狭くて一方的な見方しかできていなかったということ。前はそれで悔しい想いをしていたけど、反対意見を見越した対抗策を考えていくことで視野が広がっていく。そんなことを学べる場所かな。」
加奈さんは、自分の活動を振り返って話をしながらも「そうか、あの人にも聞けばいいんだ。」とまたひとつアイデアが浮かんでいました。
着実に活動を進める彼女は、小さな出会いも見逃さず、自分の活動につなげるきっかけにしています。
これからもプロジェクトを進めていく彼女が、これからも自分でチャンスを掴んで活動していけるよう、コラボ・スクールはそのきっかけを届け、彼女のサポートを続けていきます。