最新のお知らせ

“自分で決めて自分でやる力”を臨学舎に5年通って見つけた中学生の物語

2019.6.21

岩手県大槌町にて認定NPO法人カタリバが運営する、子どもたちの放課後の学びの場と居場所「コラボ・スクール 大槌臨学舎」。

6月に入り、大槌町も梅雨に時期になりました。日中は半袖で過ごしていても、朝晩は冷え込みます。

 

 

子どもたちにとっては、新学期になって初めての定期テストの時期。

 

「テスト」と聞くと嫌な印象を抱く子どもたちが少なくありません。

大槌臨学舎では、そのテストを単に成績の良し悪しを決めるものではなく、その経験をきっかけに子どもたち自身が自分の頑張りを認められる機会にしてほしいと思っています。

 

そんな想いを込めて、自習をする子どもたちを応援するキャンペーンなどを行っています。

 

 

 

テスト期間中になると大槌臨学舎の自習室に通う頻度が増える子どもたちが多くなる中、日頃から頻繁に通う、ある中学生の姿が。

彼は、スタッフに言われるでもなく、自分から自習室に通い、黙々と学習を進めています。

 

しかし、数年前の彼からは、今の自分の姿は想像できなかったことでしょう。

実は、もともと彼が小学生の時に奮闘したある経験が自身を変化させてきました。

 

 

 

■大槌臨学舎で身につけた粘り強さ

 

彼が初めて大槌臨学舎にやってきたのは、5年前の小学4年生の時。

当時4年生の学習内容もままならなかった彼は、最下位をとることも少なくありませんでした。

最初は親に言われるから、友人がやっているから、そんな理由で通い始めた彼。

勉強でも遊びのことでも、何を尋ねても自分の言葉で答えようとしません。

 

過去の小学生が学習する様子。(本人とは直接関係ありません。)

 

 

ーなんとか中学校に入るまでには、小学校の学習内容を復習したい。

自他共に危機感を感じ始めた小学5年生の頃、保護者の方から心配だと相談もあり、面談をしました。

彼は、受け答えの口数が少ない中、「算数できるようになりたいんだよね?」という問いかけに対し、「うん」と返事をしました。

 

面談で決まったことは、小学1年生からの内容を、毎日決めた分だけやること。

そのために、大槌臨学舎に授業日以外も通って自習をすることを約束しました。

 

本当だったら友達とゲームなどで遊びたいはず。

しかし彼は、学習をしてから遊びに行くなど、必ず時間を確保して学習に励んでいました。

 

それから約1年間、大槌臨学舎の授業や自宅でもコツコツと取り組んでいった彼。

ついに小学6年生の時、学力テストの計算分野で、満点をとったのです!

 

約1年間の彼の努力が実り、自信につながる出来事でした。

毎日の学習が成果に繋がったことに、彼は、心から嬉しそうな笑顔を見せてくれました。

 

 

 

■身につけた学習習慣を中学生活に生かす

 

そして中学生になった彼は、継続して大槌臨学舎に通い続けています。

 

 

学習準備をする中学生。

 

小学生の時より、難しくなった学習内容。学習の進度も速くなります。

決して勉強が得意ではないけれども、彼は臆せず向き合い、小学生の時の様子から徐々に変わっていきました。

 

例えば、学習のはじめ。

大槌臨学舎では、教材も、やり方も、子どもたち1人ひとりが自分で決めて取り組みます。

ある日、自習にやってきた彼は「先生、ここがわからなくて…教えてください」と付箋がつけられた問題集を取り出しました。

彼は自分で学習した上で、質問することを準備してきたのでした。

 

自習室でスタッフに質問をする中学生。

 

 

またある時の英語の学習中。彼は「単語学習をするためのプリントをもう1枚印刷したい」と言いました。

理由を聞くと、「練習用と、テスト用にしたい」とのこと。

これまでは「教材をください」と与えられた教材を淡々とこなすだけだった彼が、この日は自分で試行錯誤をしながら学習を進めていました。

 

 

 

また、学習の終わりに行う「振り返り」の時間。

この時間は、振り返りシートに、今日1日の学習内容からわかったこと、難しかったこと、また次の学習時にすることなどを書きます。

 

 

1日1枚、振り返りシートを書きます。

「今日は何ができてすっきりした?」

「どんなことでモヤモヤした?」

 

そんな問いかけに対し、最初は簡素な言葉で書いていましたが、だんだん「〜という式の問題がわからなかった」「こういう問題で間違いやすいから、特に注意して解く」と、具体的な文章になっていきました。

 

 

 

振り返りには、スタッフからのコメントが書かれます。

具体的な言葉で振り返ることは、自分で自分の頑張りを認められるきっかけです。

学習の終わりにこの時間を設けることで、彼は自信をつけていっています。

 

 

 

大槌臨学舎での「学習」とは

 

現在、誰よりも自習室に1番に通っている彼。

初めは言われるがままにやっていた学習も、今では「今日はこれをやりたい」と、自分で学習内容を決めたり、わからないところを質問したりと、「自分で決めて、自分でやる力」が身についてきました。

 

自習する中学生たち。

 

この先の将来で困難なことがあっても、楽しみながら自分で決めたり試行錯誤をしたりしながら乗り越えていって欲しい。

そんな想いをもとに、大槌臨学舎では日常の学習で身につけていけるように子どもたちと関わっています。

 

大槌臨学舎は、勉強やそれ以外のことでも、自分の「やりたい」を応援する場所です。

 

子どもたちに芽生え始めてきた意欲や興味関心を実現できるように、

これからも「自ら学習する力」を伸ばす日常をサポートしていきます!