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どんな時も自分の可能性を広げる力を。エールを送る臨学舎の卒業式。

2020.4.02

岩手県大槌町でも春の暖かい風を感じられるようになった3月。コラボ・スクール大槌臨学舎では、新型コロナウイルス感染拡大防止のための休校措置として、3月2日より受験生を対象に、そしてその翌週から中学1,2年生へオンライン授業を始めました。

 

 

画面越しに生徒たちの反応を見ながら授業を進めています

 

 

■オンラインでも変わらず「居場所と学びの場」を届ける

 

岩手県の公立高校入試は3月6日。

本来受験勉強のラストスパートをかける最後の1週間、自宅で勉強することになった受験生たちは、「これで受からなかったらどうしよう」「卒業式もなくなるのかな」と不安を口にしていました。

現在中学3年生の子どもたちは、震災当時に小学校に入学した学年。

入学式もままならない、小中一貫校になったことで卒業式も経験していない子どもたちは、どこか自分の思いを伝えきれなかったり、周りを伺って発言を惜しんだりするような子たちが多かったように思います。

 

子どもたちが来校せず、静かな臨学舎。

 

 

そんな受験生たちが、自宅にいても仲間やスタッフと過ごせる居場所と学びの場を実感できるように試みたオンラインの授業。子どもたちは普段と異なる授業形態に戸惑いながらも徐々に慣れてきた様子で、「ここの問題を教えて?」「あ、分かった!やったー!」など普段と変わらない会話をしたり、画面上でメッセージをやりとりしたりしながら、授業に臨んでいました。

受験日の前日には、1年間過ごしてきたスタッフへ「ありがとうね」と伝えるシーンもありました。

 

スタッフ・生徒が和気あいあいと話しています。

 

 

■対話を通して子どもたちの言葉を引き出す「おちゃっこ面談」もオンラインで

そして受験へ送り出した後、子どもたちとスタッフが1対1で話す「おちゃっこ面談」もオンラインで実施しました。話す内容は、直近の受験勉強中の自分自身をふりかえりや、今年1年間・中学校3年間の自分の成長したと思うことなどです。

 

Rさんは、小学生の時から臨学舎に長く通っている1人です。毎週の英語や数学の学習の他に、以前からやってみたいと話していた「服作り」に取り組んでいました。彼女は数ヶ月かけて完成させたことを振り返り、「臨学舎でやってみたいことができて良かった。家でひとりではできなかったしやらなかったと思う。」と語りました。

 

実は、彼女と同じように自分の好きな小説の執筆に取り組んでいた友人がいました。彼女は、その友人と何回も臨学舎に通い、おしゃべりしたりアドバイスしあったりと、それぞれの制作を楽しみながら進めていたのです。

当時を振り返って、「互いがいたから取り組むことができた」と話す彼女たち。臨学舎の場所を活用して、異なることに取り組んでいても一緒に高め合える関係になったようです。

 

子どもたちは受験を終えて安堵した表情を見せ、リラックスして話していました。

それぞれの完成を披露する発表会も実施しました。

 

 

■オンライン卒業式で伝える、中学3年生へのメッセージ

 

そして毎年臨学舎の校舎で行っている「卒業式」も、今年はオンラインで実施しました。

対面ではできない卒業式をいかに有意義なものにするか、臨学舎のスタッフで議論を重ねました。子どもたちが卒業式でどんな時間を過ごしてほしいか、どんなメッセージを届けるか…。そして今回の卒業式は、「未来の描き方のヒントを得る・やってみる」ということを通して、理不尽な状況や周りの環境を汲んで『しょうがない』と諦めない、自分の未来を自分でつくる力のを得ることを届けたいと思いました。

受験50日前の決起集会の様子。ワークを通して受験までの士気を高めました。

 

 

決起集会から受験勉強の歩みを1人ひとりが記したカードの掲示物。郵送で個々へプレゼントしました。

 

震災当時に小学校に入学し、稀有な環境下で小中学校生活を送ってきた現在の中学3年生の子どもたち。そんな子どもたちに、少し先の未来をポジティブに想像できるようになって欲しいという想いを込めて2時間のプログラムを企画しました。

 

スタッフ同士でも、未来の描き方は人それぞれ。

その中で子どもたちが考えるヒントになるよう、①「目の前のチャンスをとにかく直感でやっていったら自分軸が見つかった」②「自分の分析をして価値観やありたい姿を言葉にしていった」という2つの描き方を、2人のスタッフが話しました。

 

自分の経験からの学びを語るスタッフ

 

当日集まった10名弱の中学3年生たちはスタッフ2人の未来の描き方を聞いた後、「今日はどっちの描き方を体験してみたいか?」という問いかけに対し、「自分と似ているな」「そんな風に考えたことないかも」と思い思いに選んで簡単なワークをしました。

 

そのうちの1人、Yさんは①「目の前のチャンスをとにかく直感でやっていったら自分軸が見つかった」を選び、「高校生の自分にメッセージ動画を撮る」を実行しました。

スタッフが「どうしてそれをやろうと思ったの?」と直感の選択を深掘りすると、「高校生になるのが不安だ」と呟いたYさん。

中学1年生のときに1人の子と仲良くなれたものの、中学2年生の時には友人関係で悩むこともあったことを打ち明けてくれました。そんな中学3年間をふりかえりながら、「不安でいっぱいだけど、新しい友達も作りたいし、まずは声をかけたいと思う!」と少し前向きな気持ちになった様子でした。

 

スタッフが子どもたちと密に対話をする時間になりました

■臨学舎での学びをこれからの生きる力に

 

そして卒業式の最後に全員で話す時間、少しの沈黙の後、最初に口火を切ったのは小学生の頃から6年間臨学舎に通い続けたKさんでした。目立つことを嫌い、いつも周りの反応を伺って一歩引いた立場で周りと接している彼女。そんな彼女が自ら手を挙げた勇気からは、周りを気にすることは自分が思っている以上に小さいことだと気づいたかのようにも感じられました。

子どもたちは、日々臨学舎に通い、たくさんのスタッフに関わりながら、小さな成長を積み重ねてきました。そしてこの1ヶ月のオンラインの授業や卒業式まで、周りの環境を「しょうがない」で終わらせない、自分の意思で学ぶ環境を整えていくことを経験しました。

 

卒業式で「臨学舎に通ってよかった」と自信をつけた笑顔で話してくれた彼ら。

臨学舎スタッフ一同、これからの高校生活、その先の人生もたくましく・そして楽しく過ごしていけるよう、応援しています!