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今こそ未来に希望を~大槌町の子どもたちと共に学び合う大学生の挑戦~

2020.5.21

新型コロナウイルス感染対策のため、コラボ・スクール大槌臨学舎では三月二日から開始したオンライン授業を継続し、学びの機会を届けています。

 

オンライン授業開始から二ヵ月がたち、子どもたちは新しい授業形式に慣れてきた様子です。
新たに、週に一度のオンライン面談を始め、生徒一人一人の学習目標だけではなく、メンタルケアや生活習慣へのアドバイスなども対話を通して行っています。
また、四月末から追加の生徒募集を実施し、新中学一年生の授業も開始しました。

 


二か月前までは小学生だった新中学一年生

 

そんな子供たちの学びを支えるスタッフの一人として、一人の大学生の姿があります。
秋山衿奈さんです。

彼女は、現在秋田県の大学に通う大学四年生です。
国際系の分野を学び、昨年は約一年間の台湾への留学も経験しました。

彼女は今年の二月、約二か月間の短期ボランティアとして大槌臨学舎に来ました。
大槌臨学舎ではちょうど受験生が受験勉強に追い込みをかけるタイミングでした。

そんな中で、三月からの新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、状況は一変しました。
そして四月、彼女はより深く子どもたちと関わるためにインターン生として八月まで活動を延長することを決意しました。

今回の記事では、彼女の激動の四か月間をインタビューを元に振り返りたいと思います。

 

 

 

■臨学舎でボランティアを始めるまでにどんな経緯がありましたか?

実は、臨学舎に来る半年前の夏休みに日本に一時帰国し、岩手県の大船渡市で町づくりに関わるインターンシップに参加していました。
留学をしている中で、復興創生や町おこしに興味を持ち、一時帰国するタイミングで留学先から応募しました。
インターン先では、地元の活性化のために何かをしたいと考える地域の方を対象に、プロジェクトの立案・企画から実施までをサポートする活動を行っていました。

 


(インターン先での発表の場面)

 

その活動を通して、誰かが成長する瞬間をもっと応援したいと思うようになり、教育の世界に興味を持つようになりました。
また、大好きな岩手県の他の地域での活動にも興味は広がっていきました。
そんな時に、大槌臨学舎をWebで見つけ、ここしかないと思いボランティアに応募しました。

 

■ボランティア時代に印象的だったことはありますか?

ちょうど受験直前の時期に大槌臨学舎に来たので、自習に来る子どもたちの真剣な姿を目の当たりにしました。

どうしてこんなに一生懸命頑張れるの?と聞くと、それぞれ頑張りたい理由を話してくれました。
「友だちと同じ学校に入りたい。」
「勉強はあんまり好きじゃないけど、そんな自分に負けたくない。」
「いつも甘えちゃう自分がいる。根性がなかった自分を変えたい。」

目の前のやらなきゃいけないことをただやるだけではなく、自分のなりたい姿に向かって真剣に受験と向き合う姿に心を打たれました。
そんな時に、新型コロナウイルス感染予防として学校の休校が決まり、臨学舎の全授業がオンライン授業に切り替わり、子どもたちの生活に大きな影響を与えました。

※受験生のオンライン授業については過去記事参照(こちら

それと同様に、私自身の生活も変化していきました。

 


(受験生を見守るえりなさん)

 

■えりなさんの生活にどんな影響がありましたか?

最初に、大学の授業が全てオンラインでの実施に切り替わりました。
私の学校は三月の中旬にはオンライン授業化が確定し、大学の敷地内の全施設が閉鎖され、私は大学の寮に帰ることができなくなりました。

また、四月から始まる大学のオンライン授業は、どうしても対面の時以上の質があるようには思えませんでしたし、本来受講予定だった授業が日程変更により取得できなくなるということもありました。
私の友人の中には卒業に必要な授業が実施されないことが決まり「卒業自体がなくなるのでは?」という不安を抱える人もいました。
さらに、私が行くはずだった教育実習は延期になり、「教師の免許はこのまま取れるのか?」「経験がないまま先生になっていいのか?」「来年まで引き延ばすしかないのか?」と将来に対する不安も高まっていました。

 

学業だけでなく、就職活動にも大きな影響が出始めています。国際系の大学だったので、先日発表されたANAの採用停止のニュースを受けて、私の友人が悲しんでいるのを目の当たりにしました。
面接が延期になることが増え、内定がとれている人も内定切りにあうのでは?と不安になっています。
他大学の友達の中には、あえて卒業を伸ばす子や、休学申請を出して、コロナが落ち着いた来年度以降の就活に照準を定めている子もいます。
大学のキャリアセンターもオンライン面談で対応してくれていますが、いつも以上にエントリー数を増やすように指示をもらいました。
とにかく大混乱です。

 

そういった状況を踏まえた私の率直な気持ちは、「いい加減にしてほしい」という怒りでした。
本来であれば、留学を終え、会えてなかった友だちと過ごす大学最後の一年になる予定でした。しかしそれが叶わなくなり、先が見えない将来に気が滅入ってしまいました。
正直、苦しいこともたくさんあります。就活や教員免許の取得もどうしたらいいか不安です。
そんな時だからこそ、子どもたちが受験に立ち向かい、乗り越えていく姿には「私も諦めてはいけない」と勇気をもらうことができました。

 

 

 

■どうしてインターンを始めることを決めたのですか?

インターンを始めた理由は、二つあります。

一つ目は、生徒ともっと関わりたいと思ったからです。コラボスクールに来た当初は対面で子どもたちと関わることができました。また、オンラインで卒業式を行った時にも楽しそうにしている子どもたちをみて、もっと深く関わりたいと思いました。

二つ目は、自分を見つめる機会にしたいと思ったからです。大槌町に着て、様々なスタッフの方や、町の方、先生方、子どもたちとつながり、様々な価値観に触れることができました。本当に人に恵まれているなと思っています。
ここでもっと様々な人と関わり、自分を見つめなおしていきたいと思っています。

 


(生徒と楽しそうに話すえりなさん)

 

■インターンとしてどんな活動をしていますか?

英語を中心としたオンライン授業の担当をしています。
特にSkype英会話の授業はやりがいがあります。

フィリピンの先生をオンライン上でつないで行うこの授業では、子どもたちの英語力向上だけではなく、世界を広げる機会にも繋がっています。
また、フィリピンの先生の時間以外でも、私の大学時代の友人や留学先で出会った海外の友人に協力してもらい特別授業を作っています。
ドイツ人の友だちにお願いしたビーガン(完全菜食主義者)についての授業は子どもたちにとって非常に新鮮だったようで、授業を作った側の私も一緒に学びながら楽しく勉強しました。

これも、「オンライン授業だからこそできた」ことだと思います。

 


(留学時代の思い出の写真)

 

私自身、今まで台湾への留学経験がありますし、大学の授業はすべて英語で学んでいます。
まさに英語で世界が広がったと感じる当事者です。
Skype英会話を始めとしたコラボスクールの授業を通して、
子どもたちには、様々な国の文化や多様な価値観を受け入れて、自分の頭で考えることのできる芯を持った人になってほしいと思っています。

 

■この記事を読んでいる方へメッセージ

私は今、自分のやりたいことができていると感じています。
どこか自信を持てていなかった英語も、子どもたちと一緒に勉強していく中で、誰かのためになるかもしれないと感じられたことは、本当に宝物のような経験です。
大変な今だからこそ、前を向いて子どもたちに関わっていきたいなと思います。

 

 

秋山さんとのインタビューを終えて、大槌町の子どもたちとの出会いが彼女の自信につながっていることが分かりました。
また、彼女が持つ、「興味があるものへ飛び込む勇気」と「子どもたちのことを想いより良いものを求める探究心」は、子どもたちの挑戦を後押しする大きな力を与えてくれています。
彼女は、臨学舎が大切にしている「子どもたちと共に学ぶ」をまさに体現しています。

臨学舎は、これからも社会の変化に臨機応変に対応していきながら、今この瞬間のベストの学びを子どもたちと一緒に考えていきます。
彼女の姿から刺激をもらいながら、スタッフ一同、前向きに子どもたちと関わっていきたいと思います。