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「未来の自分へ結ぶ ”約束” 」〜被災地の高校生と大人の出会い〜

2019.10.08

宮城県女川町も、すっかり秋の香りがする涼しい季節になりました。女川向学館には、定期考査を控えた高校生たちが自習をしにやってきます。勉強中の各教科についての質問を持ってくるだけでなく、家族や友人関係での悩み事、これからの進路について相談に来る高校生も。女川向学館は、女川の高校生たちにとって進学先が離れた友達と集まれる、そしてスタッフと話せる貴重な居場所になっています。

さて、今回はそのような高校生たちに向けて、地元の高校で実施した企画をご紹介します。この企画は、地元のNPO・役場と連携をし、地元での就業に関する課題を解決する取り組みの一環として行われました。

この日、高校の体育館に約120名の生徒、県内を中心に集まった大学生、そして多様な職種の地元で働く社会人が集まりました。

「なかなか今後の進路やキャリアについて、高い意識をもって考えることが出来ていなくて。自分にはできない、と将来を前向きに捉えることができない高校生もいます。」と話す高校の先生。一人ひとりの高校生が、自分の未来を自分の手で創っていける、そう信じられるきっかけを届けようと女川向学館スタッフだけでなく、年の近い大学生や若手社会人が立ち上がりました。

小さなグループに分かれて、高校生一人ひとりに大学生が向き合います。

「部活がんばってるんだね!大変なこともあるだろうけど、部活で頑張った経験ってすごく大事。私も高校の時の部活で、一生モノの仲間ができたんだよ。」

「実は高校生だったときは勉強が苦手で、よく授業中寝てた…。(笑) さすがにこれじゃやばい、って途中で気がついて、そこからなんとか頑張って勉強したんだ。僕のようにならないために、勉強は早めに取り組んでいた方がいいよ(笑)」

年の近い大学生とのざっくばらんな会話に、緊張も解けて笑顔になる高校生たち。ぼんやりと描いていた将来の姿や、いま興味関心のあること、また未来に向けた不安も少しずつ吐露してくれるようになりました。

ここからは、若手社会人が立ち上がります。公務員や飲食店の経営、リハビリテーション、地元の特色でもある漁業関係の仕事など、多様な職種に就いている社会人のみなさんがどうしてこの仕事を選んだのか、高校生だった時の自分や、そこから今の仕事に就くまでの道のりを熱く高校生に語ります。

「実は、僕は県外の出身。まさかここで働くなんて思ってもみなかった。でも、暮らしてみると、地域の人たちが温かくて本当にいい町だよね。」

「僕が漁師になったのは、いまの親方に出会ったから。それまで漁業の仕事に就くとは思っていなかったんだけど、親方が働く姿を見たときにかっこいい、自分もこんな人になりたいと思ったんだ。」

「仕事をしていても、みんなのように悩んだりすることもある。でも、喜んでくれる人たちがいるから、がんばろうって思えるんだ。」

「学生時代から、絵を描くことが好きだった。挫折しそうになったこともあるけれど、続けてきたから今の仕事ができているんだよ。」

普段の生活ではなかなか耳にすることができない大人の熱いメッセージを、高校生も真剣な目で受け止めます。なかには、どうやったらこの職業に就けるのか、大切にしていることは何か、など、話が終わった後にも個別に質問に行く高校生もいました。

グループで待ち構える大学生に、高校生の口から自然と感想が溢れ出ます。
「私も、夢を諦めずに好きなことを続けようって思ったよ。」
「普段何気なく住んでいる地元だったからわからなかったけど、魅力があったんだってわかった。」

最後には、高校生一人一人がもう一度自分自身と向き合い、未来の自分に向けて今日からできる小さな”約束”を結びます。今日の出来事を、またふとした時に思いかえすことが出来るように。今日の自分と、そして未来の自分と結ぶ、約束です。

現在の高校生は、小学校低学年時に被災をしました。震災後から間もない慌ただしい時期に、学びの基礎となる非常に重要な期間を過ごすこととなりました。

復興に向けて忙しく働く大人に気を遣い、上手く甘えることが出来なかった。今になって、そう話す高校生もいます。

今だからこそ、地域の大人が一丸となり、子どもたちの未来を支えていく必要があると感じています。子どもたちが明るい未来を信じ、切り拓いていくことが出来るよう、女川向学館ではこれからも全力で応援していきます!