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子どもたちが創る「向学館の今日の授業」~中学1年生とインターン生の奮闘~

2020.1.06

宮城県女川町にある女川向学館では、子どもたちが冬休み期間中も元気に登校しています。新しい年を迎えて、久しぶりに向学館へ顔を出した子どもたちは、楽しそうに冬休みの思い出を語ってくれました。

今回は、女川向学館に通う中学1年生と今年4月から活動をはじめた大学生インターンの奮闘をお届けいたします。大学生インターンの彼女は岩手県大槌町出身で、コラボスクール大槌臨学舎の卒業生。育った町の背景や年齢が子どもたちと近いことから、向学館の子どもたちから「けいぴーさん」と呼ばれています。

女川向学館に通う中学1年生は、スタッフの企画するイベントや特別授業に積極的に参加する、好奇心旺盛な子どもたち。いつも向学館にやってきてすぐに子どもたち同士でカードゲームをはじめたり、スタッフと話をして休み時間を過ごしており、向学館が大切な居場所のひとつになっているようです。

今年度の授業から始まった、”子ども一人ひとりに最適な学びを届け、また子ども自身が勉強の仕方をより良く身に着けること”を目的とする個別最適化型の新しい授業スタイルにもすっかり慣れてきました。

中学1年生の学年は、テスト前や長期休みを機にこれまで何度かクラス替えを行ってきており、現在の一クラス5,6人構成になってからは4ヵ月が経とうとしています。

大学を1年間休学し、向学館でインターンをしているけいぴーさんは、現在のクラスになってから一人でクラスを担任として受け持つことになり、これまで以上に身近な立場で子どもたちの挑戦を応援してきました。



そんなある日、いつものように向学館へやってきた子どもたちは、けいぴーさんに自分たちの秘密基地について話をしてくれました。なんでも、向学館の近くに彼女たちだけの特別な場所がある様子。楽しそうに秘密基地の話をしてくれていましたが、授業が始まる時間になっても彼女たちの気持ちは切り替わらず、なかなか落ち着きません。休憩時間になると、子どもたちは我慢できずに教室を抜け出してしまいました。

けいぴーさんにとっては、子どもが教室からいなくなってしまうのは初めての経験だったので、大慌て!しばらくすると子どもたちは何事もなく教室へ戻ってきましたが、子どもたちには”無断で教室を出てしまい、良くないことをした”という自覚がない様子でした。

それからけいぴーさんは子どもたちが学習に飽きないよう、楽しいと感じられる時間になるよう、複数の教材を用いて授業を行うように。
子どもたちはそれに応えようと机に向かいますが、いつでも万全な体調や心の状態で学習ができるわけではありません。だんだんと、けいぴーさんと子どもが自由にコミュニケーションをとる時間は減っていきました。

その様子を見かねた先輩スタッフは、彼女に激励の言葉をかけることに。
「子どもたちが学習するかどうかは、子どもたち自身が自分で決めるべきこと。あなたが責任を感じて指示をしても、勉強するかどうかは本人次第。もっとあの子たちに任せて、学習の方法を選択させて大丈夫だよ。」

けいぴーさんは子どもたちに、向学館でしかできないことをしてほしい、向学館に来てよかったと感じてもらえたら、と願うあまり、子どもとの関わり方のバランスを崩していたことに気付きました。


それから彼女の授業では、子どもたち自身に学習を任せる、という挑戦が始まりました。

授業のはじまりは「みんなで今日の作戦会議をする時間」に。子どもたちが話し合って授業の過ごし方を決め、個人個人で学習の内容を選択するようにしました。けいぴーさんから伝えるのは「この教室の全員が、この時間の過ごし方に納得していること」「授業が終わった後、これができるようになった!と言える状態で帰ること」という大きなルールのみ。子どもたちは学習が自分たちの自由な選択であることを感じ取った様子で、丁寧に目標設定のカードを記入するようになりました。

授業の終わりは、子ども一人ひとりとけいぴーさんとが、話しながら振り返りをする時間です。「今日頑張ったこと」「今日できるようになったこと」を一対一で口にすることで、満足げに帰っていく子どもたちが増えました。

テスト期間になると、
「まずはテスト範囲を終わらせなきゃいけないから、たくさん問題を解けるように、みんなで〇問を目指そう!」
「チームに分かれて問題数を競えば、たくさん進められるんじゃないかな」
「みんなで単語の読み方が分かるように、言葉で問題を出し合おう」
などけいぴーさんが声をかけずとも、自分たちでアイディアを出し合って進めるようになりました。最終的には「今日は集中できる授業にしたい。だから、教え合い以外は私語をしないでやろう」という目標が子どもたちから出てくるほど。

テストが終わった次の授業では、「授業でやった問題が出て、全部答えられたんだよ」という嬉しい報告がたくさん飛び交いました。けいぴーさんにとっては、子どもたち自身に選択を委ねることで、これほど主体的に挑戦していけるということが驚きだったようです。



テスト後には、定期テストの目標や計画を振返る面談をスタッフと行いました。子どもたちには、ここでも自主性を育むきっかけが。自分の面談相手であるスタッフを自分で選び、授業時間内に面談を設定するというチャレンジを学年全体で行いました。
嬉しそうに結果を報告してくれた生徒は、「テスト期間のどんなことがよかったんだろう」と、自分自身を振返ります。スタッフと丁寧に振返ることで自分自身の行動が認められ、さらなる自信へと繋がっていました。「次は何をがんばっていったらいいかな」という新たな目標を立てることで、やる気がみなぎってきたようです。

もうすぐ冬休みも開け、中学2年生への進級が目前に迫ってきます。
新しいチャレンジを乗り越え、日々成長する子どもたち。子どもたちの環境づくりをサポートし、一人ひとりに向き合うスタッフも、日々たくさんの学びと出会っています。


これからもよりよい学びの場であり居場所である向学館をつくっていけるよう、けいぴーさんの奮闘は続きます!