【被災地・大槌町より】震災当時の「新小学1年生」は今
岩手県大槌町にある、コラボ・スクール大槌臨学舎(りんがくしゃ)。
200名を超える町の小中高生が足を運ぶこの場所には、今日も元気な声が響いています。
冬休みの今日は、冬期講習と「冬休み学びの場」の真っ最中。
毎日、午前中は小学生80名以上、そして午後は60名以上の中学生が、宿題や検定の勉強そして受験勉強に勤しんでいます。
ちょうど先日の1月7日、町では、中学2年生で臨学舎にやってきたコラボ・スクールの卒業生たちが成人式を迎えました。
20歳を迎えた彼らは、震災当時13歳。中学1年生から2年生に進学する春に、震災を経験しました。
そして当時の彼らと同じ13歳となる今年の中学1年生。小学校入学を目前にして震災を経験している学年です。
仮設校舎で行われた合同の入学式。体育館をパーテーションで区切り、他の学年の授業の声が常に聞こえてくるような落ち着かない環境での授業。小学校生活のスタートを切るには、あまりに厳しい条件でした。
小学校6年間のほとんどを仮設校舎で過ごした彼らが、本設の新校舎に移動できたのは6年生の9月のこと。
「震災は彼ら自身の記憶にはほとんど残っていなかったとしても、その後の環境的な変化の影響が大きい。それに、彼らの周囲にいる大人たちのストレスや不安を敏感に感じていたかもしれない」
そう推測するカウンセラーの先生もいます。
そんな中学1年生のある生徒は、小学生の頃からコラボ・スクールに通っています。
普段は明るい生徒なのですが、友人との些細な喧嘩もあって、人間関係の悩みが絶えません。
「勉強ができるようになりたい」という気持ちを持ちながら、どこか無気力で集中力が続かないのです。
それでいて、自分の親や近しい友人には、人一倍気を使っているようにも感じます。
もっと話を聞いてほしい、自分を見てほしいという気持ちが、時には乱暴な言葉に変わってしまうことも。スタッフはそれを受け止め、時には叱咤し、彼女と向き合い続けて来ました。
ある日のこと。とあるボランティアさんが、生徒たちから見えないところで静かに泣いていました。
事情を聞けば、彼女と話をしようとした際に「うざい」「早く帰れ」と言われたことがショックだったとのこと。
しかし、そのボランティアさんはしっかりと彼女と向き合ってくれていました。
「そんな言葉を言われて本当に悲しい」
「これから先は絶対にそんなことを言わないで」
彼女の前では気丈に振る舞い、確固たる信念を持って、そう伝えてくれていたのです。そうして、彼女から見えない場所で涙を流していたのでした。
奇しくも次の日は、ボランティアさんの活動最終日。その日は、授業がないはずの生徒でしたが、なんと自習室に現れたのです。
いつになくそわそわして、落ち着かない様子。どうしても自分自身では声をかけられなず、仲良しの友人が代わってボランティアさんに声をかけます。
「あのね、先生。これ、○○ちゃんが渡したいって」
ボランティアさんが手渡されたのは、1通の手紙でした。
そこに記されていたのは、後悔の言葉と感謝の気持ち。
「いつもの癖で悪口を言ってしまうけれど、本当は好きです」
直接伝えることはできなかったけれども、彼女はしっかりと本音を伝えたのです。それは、これまでの彼女を見てきたスタッフにとっても驚くべきことでした。
* * *
震災から間もなく7年。当時小学1年生だった子どもたちは、中学1年生になりました。
「変わりたい」という気持ちをどこかに持ちながら、奮闘の日々を送っています。