「しくじり先生」から学ぼう!大槌の中学生が、出会いを生きる力にする仕掛け。
岩手県大槌町にて認定NPO法人カタリバが運営する、子どもたちの放課後の学びの場と居場所「コラボ・スクール 大槌臨学舎」。
11月も終わりに近づき、朝晩の冷え込みが一段と厳しくなる大槌町。
子どもたちも、耳を赤くして登校してくるようになりました。
前回ご紹介した、「おちゃっこ面談」。
日常で関わるスタッフとじっくり話す機会となっている「おちゃっこ」とは反対に、初対面の人の話を聞くイベントが、先日開催されました。
■東京から「しくじり先生」がやってきた!
この日、東京や大阪からやってきた、6人の「しくじり先生」たち。
「しくじり先生」とは、自分の失敗談をもとに学んだことを話す人です。
子どもたちは、見知らぬ顔ぶれに少し緊張している様子もあれば、どんな話が聞けるのか興味津々な様子。
この日は、6人のしくじり先生から3人のお話を聞けるプログラムでした。
司会のスタッフから伝えられたのは、「自分で決める」こと。
大槌臨学舎に通う中学1年生から3年生までの子どもたちは、6つのお話のあらすじが紹介されたシートを見ながら、自分で「聞いてみたいな」と思う話を3つ選びます。
■どんな話を聞きたいか、自分の意思で決める
中学2年生のMさんは、普段から黙々と学習に励んだり、イベントの企画の中心になったりと、何事にも一生懸命に取り組んでいます。
友人たちと楽しい時間を過ごす反面、落ち込みが激しい時も。
そんな毎日目まぐるしく過ごしている彼女が最初に聞きたいと選んだのは、「兄弟と比べてグレてしまった」と言うしくじり先生。
スタッフ「なんでこのお話を聞きたいと思ったの?」
Mさん「自分と弟との関係に似ているなあと思ったから…。」
このようにして、他の生徒も自分と似ている、なんか面白そう、など思い思いに選んでいきました。
■本気で自分を見つめるってどういうこと?
いよいよ、しくじり先生のお話がスタート!
会場のあちこちにしくじり先生が散らばって、子どもたちは聞きたい人のところに集まります。
Mさんが選んだしくじり先生は、このようなお話でした。
======
夢中で取り組んでいるものがある妹と比較してしまい、旅行やインターン、大学のゼミなど幅広くたくさんのことにチャレンジして取り組んできた。
しかしどんなに楽しい思い出を作ってもむなしい気持ちが拭えず、先輩に相談したところ「ちゃんと成長している自分を認めて」と言われてようやく、挑戦してきた・成長している自分に気づけた。
上手くいくことばかりではなかったけれど、今は全てが正解だと胸をはって言える。全ては自分の捉え方次第。
======
この話を聞いた後、Mさんは「面白かった!」とスタッフに感想を話しました。
「私も弟とこんなことがあって・・・」
「周りに気を使って、家に帰ってから『自分ダメだったな〜』って落ち込んだりすることもあったけど、しくじり先生の話を聞いて振り返ってみたら、自分の行動は間違ってないと思った。」
話すほどではなかったけど、とMさんは言いながら、日々のささいな出来事を挙げながら心のどこかでモヤモヤとしていたことを、口にしました。
しかし、しくじり先生の “自分の捉え方次第” という言葉を受けて、自分自身で悪い方向へ考えてしまっていた、と気付いたようです。
その時々で、「自分で判断して行動してきたことは間違っていなかった」と起こった出来事を前向きに受け止めていました。
■気付いた教訓を、日々に活かすための「約束」
合計3人のしくじり先生のお話を聞いたMさん。
たくさんの教訓・刺激を受けて、徐々に表情が明るくなっていきました。
その教訓を日々に生かしていくために、最後は自分自身と「約束」を結びます。
スタッフ「今日知れてよかったのは?」
Mさん「『自分の選択は間違っていない』と思うこと。自分が判断して行動した結果が、上手くいったら嬉しい。でも失敗したとしても、次の成功のための失敗だと思って自信にしたいなあ。」
笑顔で宣言して終えた彼女は、これまで以上に、臨学舎に通うたび笑顔で1日の出来事を話したり、英語や数学の学習中も「次の検定で合格する」と意気込み、以前にも増して前向きに取り組んだりするようになりました。
■協働してつくる「しくじり先生」企画
Mさんのように、子どもたちがそれぞれに初対面の人の話を聞いて刺激を受け、じっくりと自分と向き合う時間を過ごすことができた今回の「しくじり先生」企画。
今回の企画は、日頃からカタリバを支援してくださっている株式会社ウィルグループのみなさんとの協働によって実施されました。「しくじり先生」は、ウィルグループのみなさんと協働する人気の企画の1つ。
子どもたちにとって、東京や大阪からやってくる人と話すこと・初対面の人の失敗をもとに学んだ話を聞くことは、新しい刺激を受ける経験になっています。
実際に子どもたちの中にも、昨年実施したことをよく覚えていて、楽しみにしている子が多くいました。
高校受験に向かう3年生。
部活や生徒会などでリーダーの役割が増えていく2年生。
中学校生活に慣れ、顔つきも頼もしくなってきた1年生。
これから冷え込みが厳しくなる冬。
刺激を受けた子どもたちそれぞれが自分と結んだ「約束」を続けていけるように、これからは臨学舎のスタッフがウィルグループのみなさんの思いとともに、日常で子どもたちに寄り添いながら応援していきます!